一見お得な「外貨建て介護保険」の危険なワナ 将来の「要介護」に備え保険を買う必要はある?

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外貨建て保険の販売は、新型コロナウイルスの感染拡大で対面営業ができないことや、後述のように諸々の事情で販売も減っているのが実情です。しかし、最近はオンラインでの営業にシフトして販売されるケースも多く見られます。しかも、最近はニーズの高い介護をからめる保険も増えています。

会社員の三上弥生さん(仮名・50歳)は「65歳までに保険料を年間約4500ドル支払うと、公的介護保険制度で要介護2以上の状態になったときに10万ドルの介護保険金が支払われる」という、外貨建ての介護保険を勧められました。

死亡保障と生前の介護リスクにも備えられるという商品で、保険料を外貨に代えて外国の債券や一部投資信託などで運用してお金を増やし、いざ介護状態になったときに、円に戻して受け取るという商品です。三上さんの夫も同じ商品を勧められました。1ドル=105円で計算すると、年間保険料は、夫婦で約95万円です。

「不安」を「商品の購入」で取り除くのは間違い

「もし不安があれば、商品を買って解決しよう」とするのは多くの人が陥りやすい間違いです。例えば介護だけでなく「教育費が心配なので学資保険に」「老後が心配なので年金保険に」というわけですが、そもそも商品を買う前に考えなければならないことがあります。

どういうことでしょうか。医療技術の進歩で寿命が伸びる中、確かに介護は、「人生100年時代」の大きな問題かもしれません。認知症も今後増えると見込まれています。ある生命保険会社の資料によりますと、2030年には65歳以上の高齢者の4.4人に1人が認知症になると予測されています。

このような数字を見せられると、「なるほど、国の公的介護保険制度にプラスして介護保険に加入することが必要だ」と思う人もいるでしょう。しかし、そもそもわざわざ高額な介護保険を持つ必要があるのか、さらに言えば、あえてそれを外貨建て保険で持たなければならないのかということも考えましょう。

保険を持つ目的は、万一の時に経済的に困らないためです。公的保障でカバーできない部分を自助努力で補うために私的保険に加入します。

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