日米は本質的な問題を今こそ誠実に話し合え

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 抑止力--ここで最も重要な問題が浮上する。日米同盟と抑止力の問題だ。日米両国は台頭する中国の封じ込め、核を保有する北朝鮮の封じ込めと核放棄、テロ対策、海賊行為の取り締まりによるシーレーンの確保といった分野で利害を共有する。

在日米軍の中で重要なのはどの部隊か。答えは明確だ。嘉手納の空軍と横須賀の海軍である。中国が東アジアでどんな攻撃を仕掛けようとも、横須賀の海軍にはそれを阻止する能力がある。また嘉手納の空軍は、中国を凌駕する制空権を持っている。横須賀と嘉手納は、朝鮮半島有事には決定的に重要な意味を持つ。海兵隊は、西太平洋における米軍の全体的な構成にとって極めて重要だ。

一方、辺野古への移転計画は海兵隊の駐留にとって不可欠ではない。海兵隊は、世界の安定に欠くことのできない要素だが、必ずしも沖縄に基地が必要なわけではない。グアムもハワイもかなり有望な候補地だ。

非常に重要なのは、民主党および鳩山首相が「日米同盟の重視」を確約することだ。これは、何よりも、嘉手納と横須賀に米軍が長期にわたって駐留し続けることをはっきりと是認するということである。

一方、海兵隊は、多目的な役割を担っていることを強調し、人道的支援活動やテロ対策にとってどれほど重要であるかを訴えていくべきだ。また将来は、自衛隊がこうした役割を果たすようにしていくべきだ。

米国は今後も日本を防衛することになるが、その一方で、日本の自衛隊は世界の安定に力を貸すべきだ。

普天間問題は必ずしも危機ではない。むしろ、日米両国が誠実に話し合えば、日米同盟を真によりよいものへと磨き上げるチャンスだ。

(ニューヨーク駐在:ピーター・エニス =週刊東洋経済)

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