10月開業「東京BRT」はどこまで高速輸送なのか 専用道なく渋滞懸念、本格運行まで普通のバス

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本領発揮は本格運行の開始時となりそうな東京BRTだが、課題は名前の通りの「高速輸送システム」になりうるかどうかだ。

東京BRTのシンボルとなる連節バス。プレ運行1次では1台のみの導入だ(記者撮影)

東京BRTは「到着時間が読める」ことを1つの特徴としてPRする。定時性の確保や速度向上のための方策として、本格運行時には交差点などで青信号の時間を延長し、BRTの通過を優先させる「公共交通優先システム(PTPS)」を導入する予定だ。

プレ運行時の表定速度(停車時間を含めた平均速度)は一般の路線バスと同等の時速11~15kmだが、本格運行では新交通システム並みの時速20km以上を目指している。

ただ、PTPSを導入しても、道路の渋滞に巻き込まれるリスクを完全に回避できるわけではない。専用道や専用レーンを確保するのが一般的な海外のBRTとは異なり、東京BRTは今のところ専用レーンがない。都市整備局の池田課長は専用レーンについて「検討はしており、考えていかなければいけないとは思っているが、交通管理者との協議が必要となるため今後調整していきたい」と話す。

臨海部では地下鉄構想も

BRTが運行を開始する一方で、晴海や勝どきエリアを抱える中央区は、より輸送力が大きく定時性に優れる「都心・臨海地下鉄新線構想」を掲げている。

同区は2014年度から、臨海部と銀座など都心部を結ぶ地下鉄新線の調査検討を開始。2016年に国土交通省の交通政策審議会が取りまとめた、今後の東京圏の鉄道整備方針に関する答申では、常磐新線(つくばエクスプレス)の東京延伸との一体整備により臨海部―銀座―東京を結ぶ路線として「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」の1つに位置づけられた。

「選手村跡地のマンションだけで人口は約1万2000人になり、人の流れは今後も増えるだろう。BRTも1つの方法だが、大量輸送機関としては鉄道が確実」(中央区環境政策課)。同区は都に早期の実現を働きかけるとともに、今年度は近年の開発動向などを踏まえた新たな需要予測などを独自に実施するという。現状ではあくまで構想段階の地下鉄だが、地元はすでに「BRTの次」に期待しているともいえそうだ。

近年急速に開発が進む一方で、鉄道網からやや外れた東京の臨海部。その地域の足を担うレインボーカラーのバスに求められるのは、スピードと輸送力だ。単なる「新しい路線バス」にとどまることなく「BRT」としての力を発揮するためには、定時性・速達性の確保につながる施策を素早く導入していくことが重要だ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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