「自粛中に離婚」30代夫婦が悟った絶望的な亀裂 コロナで思い知らされた"金銭感覚の違い"

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そのことがきっかけになって、それまで必死で頑張ってきた緊張の糸がプツリと切れた。

「無駄にお金を使う必要はないと私も思っています。でも、時には少しぜいたくをしておいしいものを食べたり、楽しいお酒を飲んだり、旅行に行ったりすることは、心を豊かにする。そういう時間も大事だし、子どもが生まれたら家族で旅行にも行きたい。でも、彼と夫婦でいる限り、そうしたことはすべてが無駄遣い。絶対にできないと思ったんです」

この出来事の後に、伊保子は義太郎に離婚を切り出した。

お金の使い方には人間性が表れる

伊保子は、私にこうも言った。

「考えてみると、彼と暮らしていた最後の半年は、軽いうつ状態だったと思います。

年明けに会社であるイベントの予算組みを任されたことがあったんですね。結局そのイベントはコロナで中止になったんですが、みんなが食べるお昼やお菓子の予算組みをしているときに、私は無駄がないように細かく計算をしていたら、上司から『そんなケチケチしないで、もっと使っていいですよ』と言われたんです。普段の生活がケチケチしていたから、それが出ちゃったんだんだなと、自分で苦笑いしました」

さらにこう続けた。

「彼との結婚で、知らぬ間に心まで貧しくなっていました。離婚してから、友達と食事に行って、楽しい会話をしながらおいしいお酒を飲む。そんな時間が、どれほど心を豊かにするのかというのを改めて実感しました」

離婚届けを出したものの、次の家が見つかるまで2カ月間居候をしていた義太郎だが、どうもその間に、新しく付き合う女性ができたようだった。そして、そこに転がりこむことが決まり、出ていくことになった。

少ない荷物を運び出すときに、彼がボソリと言った。

「伊保子は、かわいそうだね。お金がないと生きていけないんだから」

お金がないと生活できないと思っている伊保子を、彼は逆に哀れんでいるような物言いだった。

お金の使い方やお金に対する考え方は、本当に人それぞれだ。稼いでもいないのにブランドものを買いあさって散財してしまう人もいる。義太郎のように、ぜいたくはしたくない。生きていく最低限のお金があればそれで幸せを感じられる人もいる。

お金をどう使うかは、その人の生き方を写す鏡ではないだろうか。お金は人を幸せにもするし、不幸にもする。結婚するときは、お金に対する考え方や価値観が一緒のパートナーを選んだほうがいい。

鎌田 れい 仲人・ライター

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かまた れい / Rei Kamata

雑誌や書籍のライター歴は30年。得意分野は、恋愛、婚活、芸能、ドキュメントなど。タレントの写真集や単行本の企画構成も。『週刊女性』では「人間ドキュメント」や婚活関連の記事を担当。「鎌田絵里」のペンネームで、恋愛少女小説(講談社X文庫)を書いていたことも。婚活パーティーで知り合った夫との結婚生活は19年。双子の女の子の母。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイトはコチラYouTubeも開設。

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