マレーシアを下に見る日本人が慌てる先進日常 接触確認アプリは半数導入、現金レスも進む

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アリアさんは言う。「沢山の思い出の数々を収めたデジタルアルバムを作ろうと初めは思い立ったんだけど、それじゃ面白くないじゃない!しかも大量の写真や動画をすべて並べるのはあまりクリエイティブじゃないでしょう?だから、2次元コードを自作して、スキャンしたらアルバムに飛ぶように工夫したの。2次元コードを作るのは初めは難しいかと思ったけど、そうでもなかったわ。無料で出来るサイトを見つけて簡単に作れたから、これからどんどんいろんなシーンで手作りして活用しようと思うわ」

東南アジアのデジタルネイティブの底力が垣間見える。

この春大学に進学し、Zoomで授業を受けているアリアさん(18)。大学が出した課題に対し、2次元コードを手作りするなどしてクリエイティブな作品をオンライン上で完成させた(筆者撮影)

イスラム教徒の習慣もオンライン化「Eザカート」

前回の記事「マレーシアを侮る日本人が驚くコロナ後の日常」(2020年8月17日配信)では、ラマダン(断食月)明けの祭り「ハリラヤ」が今年はZoomで祝われたことも報じたが、あらゆるイスラム教徒の習慣にも、デジタル化の波は押し寄せている。

イスラム教徒はラマダン期間中に、ザカート(喜捨)と呼ばれる寄付を行う習慣がある。例年であれば、ラマダンが明けるまでの間に、イスラム教の礼拝所モスクにおいて、財産に余裕のあるイスラム教徒が貧しい人々に寄付をするのが習わしだ。

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しかし、今年は全土にわたってモスクが閉鎖されていたため、ザカートもオンライン化、名付けて「Eザカート」が活発化した。スマートフォンから「Eザカート」が可能なアプリにアクセスすると、1クリックで自身の銀行口座などからオンライン決済する仕組みで、5分もかからず簡単に寄付ができるようになった。伝統的なイスラム教徒の習慣が、コロナ禍のニューノーマルに対応すべく、より便利で迅速な形へと急速にその姿を変えている。

コロナとともに生きる「ニューノーマル」において、テクノロジーの進化に拍車が掛かるマレーシア。世界的にも経済成長が鈍化し、先行きへの不安が渦巻く一方で、新たなイノベーションが創造される機会と捉え、前向きな変化が生まれる兆しも出始めている。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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