「安倍政権というバブル」の後に待ち受ける結末 誰がなろうが次期政権は一段と困難な状況に

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もちろん、バブルは膨らみきったら、あとは崩壊するしかない。

まず、政権自体が崩れた。次は、金融市場、国債市場か、株式市場か、それとも為替か。あるいは実体経済か。

実体経済はコロナショックで苦境に陥っているように見えるため、明示的なバブル崩壊とはならないだろう。あるいは適度にバブルが弾けただけに、一気の崩壊はなくなったとも言える。

この反作用として、株式市場はバブルが再び膨らんだ。アメリカの市場ほどではないものの、日本の株式市場も「コロナ対策」と銘打って、必要をはるかに上回るばら撒きを行ったことによって、最後のバブルが膨らんでいる。

そして、国債市場ももちろんバブル継続である。なぜなら、国債バブルがはじけてしまっては、すべてのバブルが弾けてしまうから、ここだけは日銀が全力で守らざるをえないのである。だが、政権が崩れるのが予想よりも早く、国債バブルがはじける前に崩れてしまったことから、次期政権は非常に難しい舵取りを強いられることになろう。

財政破綻は必至、勝負どころは「財政破綻後」

そもそも、政治的に完全にバブル崩壊となる前に、安倍首相が、これは最後の賢明な判断で、早めに降りたことから、完全に崩れずに次の政権となることになった。だから、政治的な期待が底辺からのスタートということにはならないだろう。

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安倍政権末期はメディアと一部の有権者からの批判が高まっていたことから、彼らは、安倍政権よりも、彼らが批判してきた政策課題において、彼らにとってより望ましい結果を求めるだろう。しかし、それを実現するのは難しいだろう。そうなると、期待は裏切られる。

とりわけ困難なのは、コロナ対策だ。官邸官僚への批判の裏返しとして、新しい政権になれば、画期的に良くなることを期待するだろう。

しかし、「アベノマスク」という本質的にはまったく重要でない問題においてはミスを犯したものの、全体ではばら撒きすぎて財政の余力をさらに失ったこと以外は、普通の政策対応だったと思われる。それゆえ、これ以上はうまくやりようがないだろう。すると「改善」を求める人々は、行き場のない不満、要求圧力をさらなるばら撒き要求へと転化させる可能性がある。

こうなれば、財政は破綻必至で、次の政権は誰が担ったとしても、財政破綻の高いリスクに直面することとなり、これにどのように取り組むか、非常に困難な状況に直面するだろう。したがって、誰がなろうが政権の未来は暗い。

私は個人的には財政破綻は回避できないと考える。そして、最後の政治の勝負どころは財政破綻後だ。その時、どのように政治的に日本を救うか、それにかかっていると思っている。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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