北米で大規模リコールのトヨタ、対応の不手際に高まる消費者の不満、集団訴訟も

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 カムリに乗るスーザンは「運転しやすいので気に入っていたけど、最初にトヨタが対応策を発表しないので驚いたわ。日本で作られた分は大丈夫なんですって? 何を考えているのかしら」とトヨタへの不信感をあらわにする。

自動車修理工場を経営するダン一家はトヨタのRAV4を持つ。「家の車はリコール対象じゃないけれど、半導体チップの入ったハイテクの新車より、すでにメカが知り尽くされた古い車の方が安全なんだよ」と、ハイテク万能神話がはびこるシリコンバレーの風潮に警告するようなコメントをくれた。

アメリカの自動車データサイト、Edmunds.comによれば、フォードやGMの新車販売が伸びるとの予測に対し、トヨタは1年前に比べ12%の落ち込みが予想されている。敵失をまたとないチャンスととらえ、米国メーカーだけでなく、欧州勢、韓国や中国のアジア勢も、トヨタのシェア奪取に乗り出している。
 
 多少、持ち直してきたとはいうものの、米国の自動車産業ではいまだに失業者が多い。フォードの再雇用が発表されたが、時給は約14ドルとかつての半額以下だ。シリコンバレーのフリーモントのトヨタとGMの合弁工場が閉鎖になり、首都ワシントンDCの日本大使館前ではトヨタに抗議するデモが起った。今までプリウスなどのハイブリッドカーや、レクサスをはじめとする最先端の技術を搭載したトヨタが、米国のマーケットシェアで独走してきたことに対する反発も背景にはあるだろう。

一部の米国のユーザーは今回のトヨタの対応に怒っている。ニューヨークやニューオリンズの弁護士事務所が今回のリコールに対し、集団訴訟を起こした。米紙は、1000人以上のトヨタのオーナーたちが、アクセル加速からの事故やケガの補償、代替の交通手段の提供や、再販する際の評価落ちの賠償などを求めて集団訴訟を起こしていると報じた。

「納得できない」という消費者感情が根底にあるだけに、こうした動きはトヨタが誠実な対応をしなければ、ますます広がる可能性がある。すでに16人の死者、約2000人のケガ人が出ているが、過去の事故の中にも、アクセルが原因の事故に該当するのではという訴訟も出てくることだろう。

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