GDPが戦後最悪の下落!日本企業がすべき4戦略 「コロナ大倒産・大失業」時代に、生き残る秘策は

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コロナ後の経営戦略において最も重要な柱は、間違いなく「人材戦略」である。日本企業は昭和、平成と続いた「人材についての考え方」を根本から変える必要がある。

【4】「人材戦略」で企業の再生、発展をはかる

日本企業の高度成長を支えた「終身雇用」「年功序列」「新卒一括採用」といった考え方は、もはや通用しないばかりか、会社の競争力を削ぐものになってしまっている。

安定し、先が読める環境であれば、集団行動は機能する。みんなが1つにまとまり、一緒に汗をかけば結果につながる。

しかし、先が読めない不透明な時代において必要なのは、「個の突破力」である。「卓越した個の直感」や「抜きん出た行動力」が会社を救う。

人材は「新たなレールを敷く人間」「誰かが敷いたレールの上を走る人間」の2つに大別できる。いま求められているのは、前者の「荒地をものともせず新たなレールを敷こうとする気概と才能を持つ人材」であることは間違いない。

日本においても、人材の流動性は間違いなく高まっていく。とくに、有能な人材ほど1つの会社にしがみつくことはしない。自分を高め、活かせる「機会」があれば、喜んでチャレンジする。

こうした人材を確保し、適切に処遇するためには、既存の人事制度では限界がある。高度専門性を有する「プロフェッショナル人材」を処遇する市場価値ベースの新たな人事制度をつくり、既存の制度と両立させるハイブリッドな仕組みが求められている。

すべては「実行できるか」どうかにかかっている

これまでに紹介した4つの経営戦略(SPGH戦略)、つまり「サバイバル戦略(Survival)戦略」「生産性戦略(Productivity)」「成長戦略(Growth)」「人材戦略(Human Resource)」は、どれも当たり前のことばかりである。会社が窮地に陥れば、誰もが考える常識的なことばかりだ。

つまり、「やるべきこと」はわかっているのだ。あとは、それを「実行できるか」どうかにかかっている。コロナ後に起きる変化を読み解き、その変化を先取りし、先手先手で手を打たなければ、私たちはコロナの大渦に呑み込まれてしまうだろう。

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その際に求められるのは、「強力なリーダーシップ」と「戦略の実行を前に推し進める現場力」だ。

「判断」ではなく「決断」ができる経営トップと、自分たちの手で難局を乗り越え、未来を切り開いていこうとする足腰の強い現場がそろった企業だけが、コロナ後に勝ち残る。

いま日本企業が試されているのは、「本気で実行するか」どうかである。

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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