アフターコロナはバブルになる可能性が大きい 適応的市場仮説でコロナ後の市場を考えてみた

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仮に、コロナが主として「未知の病」であると思われている時と、「かなり分かった病」だと思われている時とで、他の条件を一定として、投資家のリスクプレミアムが前者で7%、後者で5%となるとすれば、リスクフリー金利をゼロとするなら、前者の株価は後者の株価よりも約28.6%安くなる計算だ。

やみくもに逆張りするのはお勧めできないが、「得体が知れない」ことの株価への影響は過大になりがちであることを知っておいて損はない。

「密」と「非接触」を巡る進化論

人間は、「社会的動物」と呼ばれることがあるように、人同士が集まろうとする傾向がある。また、人同士の距離が近い状態、多くの人がいっしょに集まる状態などを好む人が多い。

「ウィズコロナ」の状況にある現在だと、「密です!」と叱られるような状況が多くの人に好まれてきたし、幾つかのビジネスにあっては、「密」を意図的に演出して効果を得ていた。実際、一部の精神科医や心理学者からは、コロナが去ったら、人々は「密」な関係を回復する必要があるとの指摘がある。

興味深いのは、この「密」愛好がどの程度普遍的であるかだ。今回のコロナで「3密回避」や「ソーシャルディスタンシング」の必要性が繰り返し強調され、テレワークが広まるような状況に対応するうちに、他人と「密」であるよりも、「非接触」的に距離を保つほうが快適であると感じるようになった人が徐々に増えている。

感じ方や性格が変化するほど時間が経っていないことを思うと、「非接触」愛好型が増えたというよりは、隠れた「非接触」愛好者が自らの真の好みを、コロナをきっかけに発見したと考えるのが実態に近いかも知れない。

満員電車の不快感はほぼ普遍的かも知れないが、大人数の社内会議が苦痛なサラリーマン、レストランや居酒屋で間隔をあけて座ると気が楽な客、プロ野球やサッカーの試合を応援なしで観る方が実は快適なスポーツファン、などが、コロナによってソーシャルディスタンシングが要求される期間が長引くほどに、徐々に増えてくるのではないだろうか。

これは、感染症への警戒心から来るだけの問題ではなさそうだ。進化論を素朴に考えると、「密」の愛好者の方が多く遺伝子を残して長期的に優勢になりそうにも思うが、「非接触」の愛好者の方が経済的に豊かだったり、社会に上手く適応できたりすると、こちらの方が増える可能性もある。

環境が人間に与える影響を考えると、特定の環境がどのくらいの期間続くかが重要に思えるが、社会生活やビジネスのあり方の無視できない大きさの部分がコロナによって変化するのではないだろうか。いさかか雑だが、金融商品の売れ方などの経験を当てはめると、株高(安)でも円安(高)でも、2年間同一の傾向が続くと投資家のセンチメントが相当に変化する。

「ウィズコロナ生活」の継続期間に注目したい。

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