日本人の健康に「予防」の観点が欠かせないワケ 企業や地域を舞台とした仕掛けをどう作るか

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歩きたくなる街、それもハードの整備だけではなく、そういった条例を作ったり、何らかのインセンティブを作ったりすることにより、住民の意識を変えていくことが大切だと思います。

ちなみにその市は、「歩こう街づくり」を始めることによって、年間5億円もの介護の費用が抑制されているということを、発表しました。財政的にもそういった面は非常に注目されると思います。世の中全体、各自治体にもそういった意識をもってもらえるような働きかけの努力をしていければと思います。

山本:今日のお話や議連での議論にあった、「企業や地域を舞台とした予防・健康づくり」を、今後はどのように推進・実現していこうとお考えなのですか。政策立案や世論の醸成に向けた具体的なステップをお聞かせください。

「三方よし」の考えに沿って

うえの:自民党の中で、何か政策を決める際には、「政務調査会」という公式の組織があって、その下には経済関係なら「経済産業部会」、厚労省の所管する領域であれば「厚生労働部会」など、さまざまな部会があります。そこで意思決定をして政策を積み上げていくのが、自民党の政策形成における1つのスタイルです。

実はこれ以外に、議員連盟(議連)という組織があります。公式の組織ではありませんが、政策実現の1つの大きな原動力になれるように、同じような目的意識を持った議員が集まり、政策の方向性を議論して、それを政権与党である自民党や政府に対して提言していきます。私は今日お話ししたようなことを実現するために、「明るい社会保障推進議員連盟」を立ち上げ、その会長を務めています。この議連でまとめた報告書を基に、政府に提言を行い、具体的な政策につなげていきます。

先ほど、近藤さんから「三方よし」という言葉が出ましたが、実はこの言葉は私の出身地である滋賀県の近江商人が「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」を家訓としていることで有名です。信頼を得るために、売り手と買い手がともに満足し、さらに社会貢献もできるのがよい商売である、という考えです。

「明るい社会保障議連」の中でも、個人の健康の増進や、社会保障の担い手が増えること、それに応じて新しいビジネスチャンスが生まれることで「三方よし」を実現できる政策を提言していきたいと思っています。

(構成:二宮 未央/ライター、コラムニスト)

中室 牧子 慶應義塾大学総合政策学部教授、東京財団政策研究所研究主幹

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なかむろ まきこ / Makiko Nakamuro

1998年慶應義塾大学卒業。アメリカ・ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得(Ph.D)。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て、2013年から慶應義塾大学総合政策学部准教授に就任し、現在に至る。専門は教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」。

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