島津製作所、コロナで事業再編が再注目の理由 育成かそれとも撤退か、航空機器事業の未来

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――2020年5月に発表した中期経営計画では航空機器事業を「再編事業」と位置づけ、「事業再編を加速」するとしています。

コロナ後の「新常態」とどのように向き合っていくべきなのか。「週刊東洋経済プラス」では、経営者やスペシャリストのインタビューを連載中です。(画像をクリックすると一覧ページにジャンプします)

株主向けの事業報告で「拡大」「育成」「撤退」の3つの区分で事業ポートフォリオを考えていくとお伝えした。何が拡大で何が撤退になるのか。過去15年の業績をみてもらえれば、ある程度予想がつくだろう。

当社の4事業のうち、分析計測、医用、産業機器の3つはシナジーを見込めるが、航空機器だけは異質な事業で、将来を考えて必要な決断と取り組みが必要だと感じている。

自衛隊向けの製品など国防にも関わる事業だ。民間事業者向けを含めて、顧客に迷惑をかけないようによく相談しながら、悪影響を与えないように事業規模を再編していく。

高まる科学技術への要請

――売上高全体の2割を占める医用事業は、新型コロナで大きな注目を集めました。

新型コロナの検査キットや回診用X線検査装置の売り上げは大きな数字になっている。島津製作所がどのようなことをやっているのかを理解してもらえた。

うえだ・てるひさ/1957年生まれ。山口県出身。京都大学大学院工学研究科修了後、1982年に島津製作所入社。分析計測事業部長などを経て2015年から現職(写真:島津製作所)

当社はもともと、創業家の2代目島津源蔵が1896年に国内で初めて、京都帝国大学の先生と共同でX線の写真撮影に成功した。後に医療用のX線診断装置も事業として育て、戦後には分析検査の技術を伸ばしてきた。

今回のコロナの検査キットの前もノロウイルスの検査キットを手掛け、技術力を蓄えてきた。

――ノーベル化学賞を受賞した田中耕一エグゼクティブ・リサーチフェローが在籍するように技術力の高さに定評があります。どんな研究開発方針を持っているのですか。

【2020年7月27日12時20分追記】初出時、田中耕一氏の肩書に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

担当者の熱意さえあれば、新分野や新製品の開発をやめろとは言わない。新しいものはこの先どうなるかわからないものもあり、社長や役員も同席する開発会議で質問やアドバイスはする。ただ、開発に3~5年かかるものもある。

科学技術に対する要請は高まっている。新型コロナ対応でもサイエンスやテクノロジーで解決すべきというのが考え方としてある。当社はいろんな技術を持っており、あらゆるところから声をかけられ、新たな事業につながっている。技術を大事にすることが島津製作所の強みだ。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「新型コロナ対策についての考え方」「デジタルトランスフォーメーションの取り組み」「オープンイノベーションの重要性」についても語っている。
劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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