関東も危ない豪雨降らせる「線状降水帯」の正体 集中豪雨を引き起こす大きな原因の1つ

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集中豪雨による球磨川氾濫によって多くの地域が甚大な被害を受けた(写真:REUTERS/Kim Kyung-Hoon)

2020年7月上旬から日本列島の幅広い範囲で豪雨による災害が発生しています。この7月の豪雨は熊本、鹿児島、福岡、佐賀、長崎、岐阜、長野の7県で大雨特別警報が出され、7月3日0時から15日5時までの総雨量は、高知県馬路村の魚梁瀬で1491.5ミリ、長野県大滝村の御嶽山で1462.0ミリ、大分県日田市の椿ヶ鼻で1351.0ミリとなりました。

また、この豪雨に伴い熊本県の球磨川をはじめとする複数の河川が氾濫を起こし、流域では浸水や土砂災害が発生。7月16日12時現在で、死者は76名、心肺停止が1名、行方不明者が8名となり、この豪雨は「令和2年7月豪雨」と命名されました。

今回のように激甚な災害をもたらした気象現象には名前がつくものですが、気象現象が終わったあとに命名されることがほとんどであり、気象現象が続くさなかに命名されるケースはまれです。いかにこの豪雨による被害が大きいのかがうかがい知れます。

「線状降水帯」とは?

200名以上の犠牲者を出した西日本豪雨からたったの2年で、またこのような甚大な被害を出した災害に見舞われてしまうとは。新型コロナウイルスの感染拡大という未曽有の災いが起こっている中で、今度は豪雨が私たちを痛めつけます。本当に自然とは容赦しないものだと思わずにはいられません。

さて、毎年梅雨の後半になると必ずといっていいほど集中豪雨が起こり、大きな災害が発生するものです。特に、今回の令和2年7月豪雨のような数十年に1回レベルの集中豪雨を引き起こす大きな原因のひとつが「線状降水帯の停滞」です。

では、線状降水帯とはいったい何なのでしょうか。具体的には、このレーダーエコーのような状態の現象のことをいいます。

(出所)気象庁ホームページ

この画像は、気象レーダーでの観測に基づいた降水強度の分布図ですが、赤や黄色などの強い雨が降っている場所が、まるで線のような細長い形で表示されています。

線状降水帯には長さや幅などに厳密な定義があるわけではないのですが、雨の降っている場所の幅が20〜50km、長さがおよそ100km以上であるもののことを線状降水帯と呼ぶことが多いです。

線状降水帯の正体は積乱雲です。積乱雲というのは、いわゆる雷雲と呼ばれるもので、しとしとと降る雨ではなく、土砂降りの雨をもたらします。夏の夕立を発生させる犯人です。

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