阪急阪神百貨店が「劇場型」ECを標榜する狙い エイチ・ツー・オー リテイリングの新社長に聞く

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一方で、デジタル分野は比較的弱かったので、これからはアクセルを踏んでいく。われわれは「OMO(Online Merges with Offline)」構想を掲げ、オンラインとオフラインの融合を(さらなる成長への)社内の合言葉にしてきた。

エイチ・ツー・オーの社長就任前、3月中旬ぐらいに社内会議でこれを打ち出した。費用もかかるので段階的に進めるつもりだったが、コロナで状況が変わり、スピードアップして進めていかなあかん、となった。

「発見する喜び」を提供する

――とはいえ、デジタル化に成功している小売企業は多くはありません。

ECサイト大手のアマゾンと同じことを展開していては、勝ち目はないと思っている。

アマゾンはどこにでもある工業製品を揃え、膨大なデータを活用して提供するスタイルだ。確かに、自分の欲しいものがはっきりしてる場合、これほど利便性の高いショッピングのスタイルはないだろう。

第1期棟が2018年6月に開業した阪神梅田本店。2021年秋の全館オープンを目指して、工事が進められている。写真は2020年6月(記者撮影)

ただ、われわれは欲しいものを提供するだけではなくて、あの手この手で、お客さんの中にある潜在的なニーズを掘り起こすことを重視してきた。そういった「発見する喜び」を提供するのが、百貨店の仕事だと思っている。

単に工業製品を売るのではなく、意外な提案や催し物を展開し、楽しさを演出して接客する。阪急うめだ本店は「劇場型百貨店」と称して、エキサイティングな演出を手掛けてきたが、この道筋をオンラインでもつくっていく。

オンラインとオフラインを融合した複合型の営業の構造をつくっていくのが、百貨店のこれからの生き方であろう。

「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「コロナ禍でも得られたオンラインイベントの成果」「デジタル化の具体的な方策」「百貨店の再編に対する考え方」などについて詳しく語っている。
梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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