金融庁の「資産運用高度化室」はポエムに近い? 資産運用業の高度化という問題意識は不適切

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運用はこれだけ知っていれば、むしろ余計な商品を知らない方がいいくらいのものだ。ダメな商品やサービスは多々あるが、外貨建ての生命保険とラップ運用を挙げておこう。どちらも、金融ロジック的には損得に関係なく(たぶん損や解約ペナルティがあるだろうが)「即刻解約」が正解だ。

後は、お金の意思決定をする時に、他人と一緒にいないようにする「ファイナンシャル・ディスタンシング」を守って欲しい。金融マンなどと話をしてしまった場合は、2日間くらい「自己隔離」しよう。「よく考えて、必要があれば、私から連絡します」が合い言葉だ。

資産運用の「高度化」とは何か?

さて、ユーザー側である個人の運用についてひとわたり注意を述べたので、目を、運用商品の供給側である運用業界に向けてみよう。

さる6月19日、金融庁は、内外の運用業会社に関するヒアリングや調査、考察などをまとめた「資産運用業高度化プログレスレポート2020」を発表した。

運用業界に関わる人(運用会社や販売金融機関)や、運用ビジネスに興味のある投資家は、ホームページからPDFをダウンロードして、是非一読してみて欲しい。金融庁が本邦の運用業界について何を問題だと思っているのか、ハッキリ書いてあるわけではない。だが何を「資産運用の高度化」だと考えているらしいのかが、もやもやしながらも見えてくる。金融庁はメールでのパブリックコメントを募集しているので、ひとこともの申したい方は是非意見を送るといい。

大まかに言うと、世界の運用ビジネスは、インデックス運用を中心としたパッシブ運用の拡大に伴って、大手パッシブハウスへの寡占化(上位3社が大変大きい)が進むと共に運用手数料が下落傾向にあり、これに対する決定的なビジネス的打開策を欠いている。

また、金融庁は前任長官の森信親氏の時代からフィデューシャリー・デューティー(「顧客本位の業務運営」と金融庁は訳している)の問題意識を持ち、金融機関のリテールビジネスをこの観点から正そうとして来たが、今般、運用会社に於ける顧客本位をいかに達成するかについて、日・米・英の制度の違いを比較するなど、考察を深めようとしている。

詳しくは、レポートを読んで考えて頂くとして、幾つか意見と注釈を述べておこう。

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