コロナで今度こそ日本は根本から変われるのか 戦場特派員→あさイチのヤナギーが語る

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──飲まないんですか。

冗談じゃないね(笑)! 和解という言葉は敗者から出す言葉であって、勝者が言う言葉じゃない。足を踏みつけた側から和解とか未来志向とか、もういいだろうなんて言われたら、おい待てよでしょ。

ただ震災以降、出身を「会津です」と答えるのはやめました。放射性物質の被害は会津はあまり深刻ではなかった。でも福島、東北で起きていることに対し「俺は会津だから」は違うと思った。大事なものを見るために、自分もその一部だという意識を持つために、福島、もっと言うと東北だという意識が大切だなと思ったんです。

NHK時代は机にずっと辞表を入れていた

──記者としてNHKに対する違和感も率直に書かれてますよね。それでも勤め上げて引退された。

組織への不満より、目の前のおもちゃに夢中になるような(笑)。でも机にはずっと辞表を入れてました。結局使わなかった。ハッキリ言えば未練たらしいんです、バカじゃないかというくらいに。次は何が起こるか見ていたいなとか、辞めて路頭に迷ったらどうしようとか、情けない存在なんです。

『記者失格』(柳澤秀夫 著/朝日新聞出版/1400円+税/241ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

──その後の「あさイチ」では、女性陣に撃破されつつ大事な一員になった。戦場特派員から3択クイズに正解して豚まんもらう人になるって、相当レアだと思います。

ありがたかったのは、報道と違う世界に身を置く機会をもらったこと。ずっと報道にいたら、僕は世の中の半分も見ていなかったかもしれない。世の中と向き合うには謙虚であるべきと痛感させられました。慣れた世界に安住して傲慢になるなどとんでもない、と知らしめてくれたのがあの空間でした。

──長年連れ添ってくれた奥さんを「あそこにいるおばさんは俺とは違う価値観を持った1つの人格なんだ、と突然気づく」って、普通シレッと書きませんけど。

かみさん曰く「あなたガキだから」って(笑)。いいんです、子どもは子どもの特権がありますから。フィルターかけたり色眼鏡でものを見ないガキでいたい。今日も、自分のこと棚に上げて偉そうに、って針のむしろです。穴があったら入りたい。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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