あのビバホームを買収!ホームセンター下克上 LIXILから1000億円で買う、新潟企業の正体

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そして業界3位に急浮上したのがコーナン商事。近畿圏で「コーナン」をドミナント展開するが、2019年6月にLIXILからプロ向け資材卸の建デポ(東京)を約240億円で買収し、「高値買収だ」と業界をざわつかせた。今年2月には、「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス子会社のドイトから、関東地盤のホームセンター「ドイト」を約68億円で譲受。昨秋には川崎市に物流センターを建設するなど勢いが止まらない。

4位のコメリは新潟発祥ながら、農業資材を強みに、全国展開を続けてきた。北海道への大量出店を掲げてきたが、足元では関東への出店拡大に意欲的。農家向けに”収穫期払い”を導入するなど、独自戦略で右肩上がりの成長を続けてきたものの、今年に入ってコーナン商事に抜かれてしまった。

それらに続く5位が九州地盤のナフコだが、今回の買収劇によって、アークランドサカモト+LIXILビバの連合と入れ替わることになる。アークランドサカモトは買収の最たる目的に、「規模拡大による仕入れ値低減とPB商品の開発」(志田取締役)を掲げる。今やPB商品開発は、ホームセンターにとって最重要戦略であり、店舗網が乏しいとスケールメリットも出せないため、思うように展開できていなかったからだ。

日用品の乱売から、DIYや園芸など原点回帰へ

ホームセンターの市場規模は3.9兆円と、2003年から頭打ちが続く。一方で店舗数は、2003年の3860店から2019年の4810店まで増加している(日本DIY・ホームセンター協会調べ)。この間に業界再編も繰り返されてきたが、近年では「停滞市場では救済型のM&Aでないと割高になる。自前出店のほうが手堅い」(大手ホームセンター幹部)と、買収には静観ムードが漂っていた。

長らく業界を悩ませてきたのは利益率の低下だ。オーバーストア状態で生き残りをかけて安売り競争を仕掛けたら、ドラッグストアやディスカウントストアも入り乱れる、日用品の特売合戦に陥ってしまった。それらと一線を画すため、DIY(日曜大工)や園芸といった本来の得意分野にシフトすることで、差別化を図る戦略に切り替えてきたのである。

本業回帰で効果を発揮したのが、PB商品の開発だった。ホームセンターでの売れ筋商品は店舗によって定番化しており、PB商品に切り替えることで安売りを回避できる。独自商品が充実してくれば、他店との差別化にもつながる。これが奏効したのが、カインズやコメリである。コメリの売上高に占めるPB比率は約42%と高く、農業用長靴ほか複数のヒット商品を生み出している。LIXILビバもPB比率は26%あり、10%にとどまるアークランドサカモトと共有化するだけでも、スケールメリットが見込めそうだ。

PB強化だけではない。それと並行してDCMをはじめとする各社は、売り場を縮小して空きスペースに100均店を導入するなど、集客にも力を入れてきた。坪単価を向上させるべく涙ぐましい努力を積み重ねることで、飽和状態のホームセンター業界で何とかシェア拡大を図ってきたのだ。

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