「アフターコロナの世界経済は元には戻らない」 玉木元財務官が説く「新たな経済」の必要性

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――コロナ危機の中で世界的な格差の拡大も懸念されています。

大きな問題は、新興国におけるリスクの高まりだ。公衆衛生上の脆弱性から新型コロナの感染が急拡大しているうえ、国境封鎖によって経済的なダメージも深刻化している。

崩れる新興国の発展モデル

その中で新興国からの資金流出が加速しているのに加え、外国からの直接投資も大きく減少している。コロナ危機を受けてグローバルなサプライチェーンの見直しが進んでいるためで、新興国に工場をつくることのリスクが懸念されている。いろいろな意味でこれまでの新興国の発展モデルが崩れつつあるといえる。

先進国から新興国への大きな資金の流れが逆転して新興国が危機に陥るという事態は、(アジア通貨危機やロシア、ブラジル債務危機など)1990年代にもあった。IMFによる支援体制の強化を含め、先進国の貯蓄を新興国や途上国へ流す枠組みを検討する必要があるだろう。

――原油価格の急落も新興国に大きな影響を及ぼしています。

石油収入によって国家財政を支えている中東産油国のレジーム(政治体制)が大きく揺らいでいる。石油や天然ガスの価格が安くなったからといって、気候変動対策、脱炭素の必要性が高まる中、需要の伸びには限界がある。長期的に価格低迷が続く可能性は高い。ロシアを含めた産油国の体制がドミノ的に不安定化する事態も潜在リスクとして想定しておくべきだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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