コロナ後が気になる「電車の換気」の重要性 空調完備でも通勤電車は窓が開くほうがいい

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では、窓が開かない特急や新幹線の換気はどうなっているのか。

大前提として、これらの列車は乗客が基本的に着席することとなっている。混雑時には立ち客もいるものの、普段から立って乗るのが当たり前の通勤電車とは異なる。

在来線特急の車両は、車外から取り込んだ空気を、空調装置からダクトを通じて車内に送り込み、排気扇を使って車外に排出して換気している。

新幹線は、高速走行を行うため車内の気密性が高い。トンネルに入った際などは気圧が急激に変化するため、空調装置のほかに「連続換気装置」と呼ばれる装置を備えている。この装置は気圧変動を抑えて吸排気できる構造になっており、これが車外と車内の空気の入れ替えを行う。

換気装置で取り込んだ空気は、空調装置を経て車内に送り込まれ、車内を循環する。空気は循環しながら次第に新しく取り込まれた新鮮な空気に入れ替えられ、換気装置を経て車外に排出される。

JR東海は、東海道新幹線の車内の空気は7分から8分程度ですべて入れ替わると車内でアナウンスしている。このような方法で、特急や新幹線では窓は開かなくても換気ができるようになっており、一定の時間で車内の空気はすべて入れ替わっている。

冷房の時期も窓は開ける?

現在の鉄道では、天気のいい日に窓を開けて気分よく、という昔ながらの旅を経験することはあまりない。新幹線や特急は窓が開かず、通勤電車は換気ができるように開閉が可能ではあるものの、空調が一般化したことで電車の窓を開ける機会が少なくなった。

また、現在では冷房の完備により、車内の換気も空調装置が担う形が大半になっている。

ある冬の夜、筆者が混雑した電車に乗ると、車内が蒸して空気がよどんでいた。どうしたものかと感じていると、車内に冷房をかけるというアナウンスがあった。車内が混雑して室温が高くなったり、空気がよどんだりすると、冬でも冷房をかけることが増えている。

新型コロナウイルスの感染防止に向けた緊急事態宣言が各地で解除される中、夏が近づきこれから暑さは本番を迎える。再び乗客が増える電車内は換気の重要性がさらに増す一方、冷房中は効果を高めるため、窓はなるべく開けないのが普通だ。今後、車内の冷房と換気をどのようにするのか気になるところだ。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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