「不倫を叩く日本人」と「寛容なドイツ人」の大差 ドイツ人が「浮気相手に慰謝料を求めない」訳

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シュレーダー元首相の不倫の場合も、4度目の妻との婚姻中に既婚女性であるキム・ソヨン氏と付き合い始めた際に「シュレーダーは新しい恋を見つけた」という見出しをつけるなど好意的な書き方をするドイツのタブロイド紙もありました。

これは国民の世論とも近い感覚で、ドイツでは「不倫といえども、人の『好き』という気持ちは応援すべき」「愛のことは当人同士にしか分からない」と考える風潮があります。

もちろん今回の渡部建さんのように複数の女性とトイレやホテルで肉体関係を持つような関係や、逆に一人の女性と長い期間にわたり関係を持ちながらも妻と別れる気配のない男性はドイツでも支持されません。でも、新しい恋の到来とともに離婚の準備に入るなどそれなりの行動が伴えば応援される傾向があるわけです。

日本では夫婦が既に別居状態であったとしても、書類上はまだ夫婦であれば、世間はそれを不倫と見なし、有名人であればバッシングされてしまいます。一方、ドイツの場合は既に別居状態にある夫婦というのは、世間から「夫婦関係が破綻している」と見なされ、不倫という扱いにはなりません。

実は日本でも法的には別居状態の夫婦に関しては夫婦関係が破綻していると見なされていますが、世間の認識は違うようです。だからこそ日本では有名人に対する「不倫バッシング」が頻繁に起きているのだと思います。

不倫は「夫婦だけ」の問題

日本の不倫バッシングについて、あるドイツ人女性と雑談していたところ、彼女はこう言いました。

「結婚というコミットメント(契約)を守らなければいけないのは、当事者だけだと思う。なので、新しい恋人や愛人などはコミットメントの対象外だと思う」

つまりは、結婚によって法律はもとより「心の契約」を結んだのは夫と妻の二人なのだから、「外での恋愛」に関する責任はその当事者の二人(夫婦)にしかなく、赤の他人が愛人や新恋人を責めるのはお門違いだということです。

彼女曰く「愛人や新恋人は(自分が結婚していない場合は)誰とも契約を結んでいないのだから、基本的に誰と恋愛をしようと自由」とのことでした。

もちろんドイツ人全員がそういう考え方だというわけではありません。でも誤解を恐れずにいうと、筆者はこの女性の語る「結婚という契約を結んだのは夫婦だけであり、部外者(愛人や新恋人)は関係ない」という考え方もある意味論理的だなと思いました。

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