日本が選択すべき「孤立する中国」への態度 国際政治に破壊される「サプライチェーン」

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アメリカ議会でも中国政府の責任を問う動きが始まっています。ジョシュ・ホーリー上院議員(共和党)は、民主党の下院議員らも加えて超党派で中国政府の法的責任を問い、被害を受けた各国に対して賠償金支払いを求める決議案を上下両院に提出しました。

中国との関係を見直すドイツ

同様の動きがヨーロッパにも起こっています。

発行部数220万でドイツ最大の日刊新聞ビルトは、4月15日、コロナウイルスでドイツが受けた被害への賠償金として、中国政府に対して総額1650億ドルの賠償を請求すべきだとする社説を掲載しました。

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アンゲラ・メルケル首相は4月20日、「中国が新型ウイルスの発生源に関する情報をもっと開示していたなら、世界中のすべての人々がそこから学ぶうえでよりよい結果になっていたと思う」とし、中国が情報を隠したことを批判しました。

メルケル首相はこれまで中国に友好姿勢を示していたのですが、その姿勢を一転させたのです。

ドイツ経済は、中国に強く依存しています。とくに、自動車産業がそうです。フォルクスワーゲンの全世界での販売台数のうち、中国が約4割を占めています。

ただし、それは経済関係に限定されたものであって、ドイツ国民は必ずしも中国に対して好意を持っているわけではありません。

コロナウイルスによる被害のあまりの大きさに、ドイツ国民の本音が出てきたのだと言えるでしょう。

イギリスの保守系シンクタンクのヘンリー・ジャクソン協会は、中国当局の情報統制のために、多くの武漢市民が春節連休前に海外へ出たことが世界的な感染拡大を招いたと指摘し、主要7カ国(G7)だけで損害賠償額は3兆2000億ポンド(約430兆円)に達するという試算を公表しました。

ヘンリー・ジャクソン協会は、中国にその補償金を支払わせる方法として、中国政府や国有企業が保有するイギリス政府の各種債券やイギリス側の対中債務から取り立てることなど提案しています。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月中旬、『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、「独裁的な国では私たちの知らないことが起きる。中国武漢でのコロナウイルスへの中国政府の対応に疑問があることは明らかだ」と述べ、中国政府の責任を明確に指摘しました。

賠償金を求める動きは、オーストラリアでも起きています。

また、インドの弁護士団体などが、20兆ドルの賠償を求める請願書を国連人権理事会に提出しました。ナイジェリアでも、弁護士らが中国政府に対し2000億ドルの賠償を求める考えを表明しました。

4月16日のG7テレビ会議の後で、米英仏の首脳は、そろって中国を批判しましました。

イギリスのボリス・ジョンソン首相の職務を代行しているドミニク・ラーブ英外相は、記者団に対し、中国とはこれまでの関係を維持できないかもしれないと話しました。

マクロン氏は、中国が新型ウイルスの流行にうまく対処していると「ばか正直」に信じてはいけないと警告しています。

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