新鎌ヶ谷駅は千葉県民の「森林愛」に満ちている 駅舎リニューアル時に地元の山武杉を活用

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髙木氏は続けて木の持つよさを教えてくれた。「木の成長の過程で、人の吐き出す二酸化炭素を吸収して酸素を吐き出します。育ちきった木は、いわば炭素の缶詰なのです。多くの方々にそんな木のよさを感じてもらう機会を増やしたい、そんな気持ちからこの助成金を始めました」

千葉県庁農林水産部森林課森林経営管理室の髙木純一氏(左)と木村真琴氏(右、筆者撮影)

山武杉は山武地方で古くから育ててきた挿し木の杉の品種であり、まっすぐな幹を持ち、太さが一定しているので木材として非常に優秀な性質を持っている。また油分も多く耐久性があるため江戸時代から明治にかけては、舟材や障子等の建具として使われ利用されてきた。

また特筆すべきなのは、木の色だ。淡紅色でとても可愛いらしい。山武杉の助成金は、保育園や地域交流センターなどに使われているそうだが、その愛らしく温かい色が子供から好まれるのは目に見えるようだ。

木村氏が教えてくれた。千葉県庁に北総鉄道から助成金の申し込みがあったとき「鉄道会社が駅の整備に山武杉を使ってくれるそうだ」と、喜びの声があがったそうだ。

「こもれび」で待ち合わせ

ステーションラウンジこもれびのベンチは黒い部分をハブにして、さまざまな形に変えることができる自由度の高い造りにした。そして、柱にも山武杉を使い「こもれび」の名前を貼りつけた。利用する人々に「こもれびで待ち合わせしよう」そんなふうに使ってもらえたらうれしいという。

ステーションラウンジこもれびのベンチ(筆者撮影)

千葉県庁の森林課で山武杉、ヒノキ、サワラの折り紙を見せてもらった。保育園で使うおもちゃの什器の写真も、木の積み木やピンバッチも見せてもらった。子供が喜びそうなたくさんのものに山武杉が使われている。

それもそのはずだ。千葉県の子供たちが木に触れて豊かに育っていく「木育」を推進しているという。いま千葉県では「木育」という言葉をかかげ、子供たちに木を身近に感じてもらおうとしている。

新鎌ヶ谷駅を通るすべての人に開かれているステーションラウンジこもれび。新型コロナウイルスの感染拡大が収束して人々の往来が復活したら、この場所に再び人々が集うようになる日がくることを、願ってやまない。

さとう ようこ ライター、宣伝プランナー

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Yoko Sato

美術大学卒業後、クルマ会社のハウスエージェンシーにて広告宣伝・販売促進のクリエイティブディレクターを務める。転職した広告代理店に勤務していたときに担当していたゲーム会社から受託し、シナリオライターに。その後、顧問として家庭用ゲームソフトの広告ディレクターおよびコピーライターとなる。現在はゲーム会社出身のママ友に誘われ、エンターテインメント系デザインプロダクションにライター&プランナーとして参加している。

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