学習塾のオンライン化「諸刃の剣」と言える理由 塾経営者たちが語るメリットとデメリット

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またComiruの場合、コミュニケーションツールに加え、先述したバックオフィス効率化のためのシステムを一括で提供していることも急伸する要因となっている。

学習塾の中には、連絡管理だけをオンライン化している、または業務管理だけをオンライン化しているところも少なくなく、包括して管理するシステムがなかったというのだ。ちなみに、学校におけるこのような業務支援サービスにあたるものが、ベネッセとソフトバンクの合弁企業が運営するオンライン活用支援アプリ「Classi」となっている(が、先日、不正アクセスがあったことは記憶に新しい)。

コミュニケーションの構築、バックオフィスの効率化……かゆいところに手が届くではないが、生徒や保護者とよりよい関係を築くために、学習塾はバックヤードのオンライン化を推し進めてきた背景を持つ。そのうえで、オンライン授業に踏み切るべきか、と勘案するわけだが、オンライン授業に消極的な学習塾は多かったという。POPERはComiruに加え、今年3月からWEB授業&オンライン授業ソリューション「Comiru Air」をローンチしたのだが、開発段階では塾や保護者からオンライン授業に対する抵抗感があったと明かす。

「小さな学習塾さんは、そもそも生徒数が多くないので、『オフラインで十分』という反応が多かったです。また、保護者の方は、コミュニケーションの観点からオンラインがオフラインに勝るとは考えていかなったため、わざわざオンラインでする意味があるのか、という印象を持つ方が多かったんですね」(佐久間さん)

コロナで「オンライン」求められる状況に

ところが、世界的な新型コロナウイルスの流行により、風向きは激変。「Comiru Airへの問い合わせは、2週間で200件ほどいただき、10倍ほどに膨れ上がりました」と言うように、学習塾は一気にオンライン授業への舵切りを迫られることになった。

オンライン授業を導入した埼玉県鴻巣市にある学習塾「私塾 学びの道」は、「通塾時間が削減されるので保護者、生徒たちの負担も減りました。オンライン授業のメリットは時間の有効利用と家庭で集中して学習する動機づけです」と、その利点を挙げる。また、通わせる保護者も、「自宅から塾への移動がないので、時間が有効に使えると思います」と声を弾ませる。

一刻も早くオンラインへ。そんな機運も高まるが、生徒数約140人、約25人の講師を抱える上野にある「進学個別 桜学舎」塾長の亀山卓郎さんは、そのメリットを認めつつも、異なる視点で次のように指摘する。

「我々は、2年ほど前から『Whereby』というオンライン会議ツールのシステムを基に、独自でオンライン授業をしていました。いち早く、今年3月中に全生徒のオンライン授業化を図ったのですが、想定していたあらゆる問題が噴出しました」

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