トヨタ「新型ハリアー」異例ずくめ発表だった訳 全車種併売化の目玉車種にもコロナ禍の煽り

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登録車のシェアが50%近いトヨタの国内販売でさえも厳しい状況に陥っている(記者撮影)

専売車種として長くハリアーを扱ってきたトヨペット系の販売店も余裕はない。東海地方のトヨペット系販売会社では、新型ハリアーの発売を睨み、現行ハリアーのユーザーには刷新予定の情報を去年秋からひそかに伝えてきた。併売化でほかのチャネルに自社の顧客を持っていかれるのを阻止するための動きだ。

新型ハリアー発表後は現行のユーザーに対して電話で密に連絡を取っているという。ただ、「コロナ危機で夏のボーナスが減れば、こちらの期待どおり買い替えはしてくれないだろう」と同社幹部は新車の買い控えを懸念する。

もともとは4月にお披露目予定だった

茨の船出となる新型ハリアーだが、そもそもは4月のニューヨークモーターショーで初お披露目される予定だった。アメリカの複数の自動車メディアは「VENZA(ヴェンザ)」の名称でハリアーが北米市場に投入されるとかねて報じていた。ヴェンザは2008年に登場した北米専用の中型クロスオーバーで、アメリカ向けは2015年モデルを最後に姿を消していた。今回、その車名が復活することになりそうだ。

新型ハリアーは世界的なSUVブームを追い風に日本専用モデルからグローバルモデルに生まれ変わるべく開発された。その華やかなワールドプレミアの場となるはずのニューヨークモーターショーは新型コロナの拡大を受けて、8月下旬の開幕に延期。待望の新型車もコロナ禍に翻弄されている。

2020年の世界の新車販売はコロナショックで少なくとも20%は減少するとの見方が世界のアナリストの間では主流になりつつある。2019年にグループで過去最高の1074万台を販売したトヨタにとっても、大幅な販売減は避けられない。

コロナショックに直面した企業の最新動向を東洋経済記者がリポート。上の画像をクリックすると特集一覧にジャンプします

トヨタの豊田章男社長は4月10日に日本自動車工業会の会長として、ほかの自動車3団体トップとともに開いた緊急会見で次のように話した。「新型コロナウイルスが収束した時に経済をいち早く復活させる一番の原動力になりたい」。自動車の生産波及効果は国内の全産業でトップだからこそ、経済の維持や回復で果たすべき役割が大きいと訴えたのだ。

魅力的な新型車があれば、消費者は競合車種を含めて購入を検討するようになり、新車市場の活性化につながる。未曽有の経済危機の最中に発売を迎える新型ハリアー。これまでの刷新とは比べものにならないほど大きな使命を背負っている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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