日本の大学発ベンチャーがパッとしない病根 経営者はアメリカでの資金調達を検討すべし

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今回のショーケースのUCSD側の担当で、日米のバイオテック投資に詳しい在米エンジェル投資家のTakashi Kiyoizumi(清泉貴志)医学博士は、「日本の大学として非常に積極的な取り組みで、目的も達成した」と評価する。

2日目のネットワーキングの様子(写真:京都大学)

初日は、海外企業の現地法人設立に詳しい弁護士・会計士がアメリカでベンチャーを立ち上げる際の注意点について講義したのに続き、バイオテック関連の日系経営者たちがアメリカのバイオテックベンチャーの資金調達の特徴、経営環境の違いなどについて講演した。

2日目は、バイオテックに詳しいエンジェル投資家、大学教員、ベンチャー経営者たちがコメンテーターとなり、日本からの参加企業5社が英語で発表・質疑応答を行った。投資家やVCを含め、約100名の関係者が参加し、ショーケースの終了後はネットワーキングが催された。

なぜアメリカに行く必要があるのか

INITIALのデータによると、2018年のアメリカのVC投資額は日本の37倍。経済規模やベンチャーの数に違いがあるので、日本と比べて投資機会も金額も大きいと考えられる。

日本企業の例はまだ少ないが、中国・韓国のベンチャーがアメリカで資金を調達するために現地法人を設立するケースは多い。競争こそ激しいものの、実力で勝負できる舞台なので、勝者となったときのリターンは大きい。

今回のショーケースに参加したベンチャーも「(アメリカの投資家は)日本の投資家とはマインドがかなり違う。自分たちには日本よりもアメリカのほうが合っている」と感想を語ってくれた。

一方で、アメリカにおける日本のベンチャーへの期待も大きい。今回のショーケースで知り合ったVCは、「日本の大学発のベンチャーのレベルが高く、テーマも面白いので、びっくりした」と評価する。

裏を返せば、日本の有力ベンチャーにもアメリカという舞台でもっと活躍できる余地が残されているということだ。そのために不可欠な要素が「スピード感」である。

今回のショーケースで発表したベンチャーを例にとると、2月末に発表し、3月前半にはアメリカ国内で起業する準備に着手。アメリカ政府から資金を調達し、ある疾患の治療薬開発に関する共同研究を行うという協議が進んでいる企業があるそうだ。

優秀なベンチャーで、国際的な市場もある研究だから注目されたかもしれないが、このような速いスピードで進むことはベンチャーにとって非常に魅力的といえるだろう。

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