コロナと人類は「勝ち負けなしの共存関係」だ グローバル社会では共倒れしない道を探れ

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ウイルスが地球上から消えてなくなることはない。新型コロナウイルスも、いったん収束へ向かったとしても、第2波、第3波がやって来る。いくら人と人との接触を抑制しても、ウイルスが絶滅するわけではない。SARS、MARSも同様だ。何かのきっかけがあれば、再びどこかで感染の広がる恐れがある。

2021年の夏までに、人類が集団として新型コロナウイルスの免疫を獲得することは恐らく不可能だろう。ワクチン、公共特効医薬も間に合うかわからない。

2021年に東京オリンピックを延期したことで、日本中はひと安心したかに見える。だが、果たして本当に来年開催できるか。絶滅はありえない新しい「友だち」の正体も性格も不明な現在、まだまだ油断は禁物だ。

私はむしろ悲観的に捉えている。しかも未知のウイルスや細菌だけが、日本の脅威ではない。日本では、地震がいつどこで起きても不思議ではない状況が続いている。首都直下地震、南海トラフ地震は今日起きることも十分ありえるし、来年もしオリンピックが開催されたら、その期間中に起きることも十分にありえるのだ。

首都直下地震が起きる確率は30年間で70%と言われているが、それは首都圏のどこか、あるいは南関東のどこかでマグニチュード7程度の地震が起きる確率が示されているのだ。地震が起きるのは不規則、だから、いつ「首都直下地震」が起きるかという予知は不可能なのである。だが今後30年間で、マグニチュード7前後の地震が起きるというのは、統計からいって間違いない。日本が地球上最大の地震発生地帯にある以上、地震は避けられないのだ。

日本の脅威は、地震だけではない。温暖化による風水害は、間違いなく今年も起きるだろう。来年の夏の地震や台風の襲来についても、全国民が全身全霊で神に祈る気で身を正すしかない。

現実を見よ! 危機感を持て

感染抑制のためにこの1カ月、日本中が自粛を強いられている。小中高の休校は2カ月に及ぶ。果たして5月から通常どおり学校が再開できるかも不透明だ。大学やその他の学校も同じ状況であろう。企業はテレワークを進めているし、繁華街も閑散としたままだ。

新型コロナウイルスの影響で、日本経済の落ち込みは避けられない。世界経済の落ち込みは、国によっては日本よりも深刻だ。感染がいったん収束すれば、世界経済は回復に向かって動き出すだろうが、痛みは国によって異なる。ダメージの大きい国には、世界的な枠組みの中で回復へ助け合って進む必要があろう。

令和のこれからの30年、将来やらねばならないことが目白押しだ。

世界経済の落ち込んだ中で、我々は何を、どうするのか。よく考えるときである。日本の強み、弱みとは何か。我々老若男女が生きるために、世界に誇れる国になるために何が必要かを真剣に考えよ。神は日本の原点と自分の原点を見つめ直す、よい機会を与えたもうた。

退屈だからと外へ出ていくことも簡単ではない現在、日本人、特に若い人たちはこの自粛の間、自分たちの将来を考える絶好の機会と捉え、改めて読書に取り組むことを心より願っている!

丹羽 宇一郎 日本中国友好協会会長

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にわ ういちろう / Uichiro Niwa

1939年愛知県生まれ。名古屋大学法学部を卒業後、伊藤忠商事に入社。同社社長、会長、内閣府経済財政諮問会議議員、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画WFP協会会長などを歴任し、2010年に民間出身では初の中国大使に就任。現在、公益社団法人日本中国友好協会会長、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、福井県立大学客員教授、伊藤忠商事名誉理事。著書に、『丹羽宇一郎 戦争の大問題』東洋経済新報社、『人間の器』幻冬舎、『会社がなくなる!』講談社など多数。

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