コロナと人類は「勝ち負けなしの共存関係」だ グローバル社会では共倒れしない道を探れ

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凶暴なうちは距離を置くしかないが、地上から消し去ることはできない。相手も自己増殖力がなく、単独では生きていけないのだから、必ずどこかで生存・共存の道を探ってくる。そこで互いに折り合い(免疫力をつけ)、友だちになれるかもしれない。

石橋湛山の警句を読み直せ!

これまでのウイルスは、SARS、MARSも鳥や動物を宿主とするウイルスが人間に感染したものだ。動物からヒトへ、そこからヒトヒト感染が起こり、社会に感染症が広がった。

だが、第7のコロナウイルスCOVID-19はこれまでのウイルスと異なり、はじめから人間を宿主としていたのではないかという疑惑を抱く専門家もいる。それほど、この新型コロナウイルスは謎が多く、だれも見たことがない。

鳥や動物を宿主としていたはずのウイルスが、初めて人間を宿主にし始めたのかもしれない。最近は、ニューヨークでペットのネコやブロンクス動物園のマレートラが感染したと報道される。

テレビでは感染症の専門家という人が、毎日入れ替わり立ち替わり現れては色々なことを言う。だが結局、長い目で見れば過去もそうであったように、新型コロナウイルスの正体も不明のまま、被害を最小限にしながら、人間が免疫を持つという方向で話題から消えていくようだ。

しかし、経営というものは、社員の幸福と企業業績の拡大という高度なバランス感覚が求められるし、国も経済発展と福祉という難しいバランスを取らなければならない。いかに困難でも、リーダーがここから逃げることはできないのだ。

新型コロナウイルスの感染に関する報道の経緯を追ってみると、1月、2月までは、思いもよらぬ楽観的な報道だった。しかし、東京オリンピックの延期が決まる前後から突然深刻さが増した。

政府の発表も、感染拡大初期は水際対策に重点を置いていたが、感染者が急拡大するに伴い緊急事態宣言が聞こえはじめ、4月7日安倍首相は7都府県に緊急事態宣言を発出し、4月16日には緊急事態宣言を全国へ拡大した。政府の対応については、当初から「後手後手に回っている」という批判がある。

戦前、石橋湛山は政府の定見のない振る舞いにこう苦言を呈した。

顧みるに我が邦は内外様々な点において容易難局に立っておる。(中略)しかるに近来我が為政家は勿論、思想家、教育家、ないし一般国民のこれらの問題に対する態度を見るに、甲の問題が起れば忽こうとして甲に走り、乙の問題が起ればまた忽こうとして乙に走るというが如く、少しもわが根本的の立場から定めて、これに照らして、総ての問題に徹底的解決を与うるということをしない、あたかも彼らのなせるところは、下手の碁打ちが一小局部にのみその注意を奪われて、全局に目を配ることが出来ず、徒に奔命に疲れて、ついに時局を収集すべからざるに至らしむるようなものである。
石橋湛山「哲学的日本を建設すべし」『東洋時論』

翻って今日、この間の日本政府、マスメディアに、この石橋湛山のいう「覚悟」があったか。湛山の論説は戦前の日本についてだが、改めて多くの日本人にこの警句を読み直してもらいたい。

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