殺気立つ英語圏の人がアジア人に浴びせる罵声 「あぶない英語」が放たれたらとにかく逃げよ

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平穏な生活と、ホームレスによるアジア人襲撃。内容が矛盾するのは、私の友人は富裕層の住む地域に在住しているので、上述のような事件とは無縁でいられるからでしょう。アメリカは所得によって、完全に居住区域がゾーニングされていますから、どこを切り取って報道するかという問題になってくるかと思います。

「富裕層の住む地域では、普段と変わらず穏やかな日々を過ごしています」と報道しても興味を持つ人は少ないですが、「(貧困地域では)ホームレスにアジア人が襲われるという事件が多発しています」と報道すれば、センセーショナルで閲覧数が上がります。

そうなれば記者も仕事をしたことになり、会社も閲覧数が伸びて万々歳ということになります。コロナ禍によって、低所得者層の住む地域では、かなりひどい状況になっていると想像はできますが(貧困層の多い地域ほどコロナ感染率が高いとのデータがあります)、先述の報道の側面を認識したうえで、情報に接することは重要です。

アメリカはひとたび国難があれば、ひとつにまとまる

コロナウイルスパンデミックの対応をみると、日本は過去思考でアメリカは未来志向のように思います。日本では「本日の陽性者は何人」と発表しています。当然アメリカでもCASES(感染者数)とDEATH(死者数)は発表していますが、それに加え、このままいくとどれくらいの人が感染し、どれくらいの死者が出るという予想まで出して、力を合わせて防ごう、乗り切ろうというコメントをしています。

感心したのはニューヨーク州のクオモ知事が、「皆さんから『When is it over?, What happens?』と聞かれますが、No one knows for sure.(誰も正確なことはわからないのです)と答え、さらに、大事なのはFactである。Facts are empowering.(事実は力を与えてくれます)と述べていたことです。

普段アメリカ人は、わがままで能天気、何事もなければパフォーマンスを重視し、利益を第一に追求すると感じます。しかし、911のときがそうでしたが、ひとたび国難があれば、1つにまとまります。そして、その力は絶大。また、多民族国家であるアメリカは、現実に蔓延する差別を直視するため、人権意識が高く、変化にも対応できるポテンシャルを秘めています。

実際、今回の騒動では、国民の命を優先することに短期間で方向転換しました。トランプ大統領だけではありません。ニューヨーク州のクオモ知事のような自治体の首長もそのような方針を打ち出しました(クオモ知事の初期対応への批判はありますが、その後は健闘しています)。

ほかの国でも、ドイツのメルケル首相、ニュージーランドのアーダーン首相などがリーダーシップを発揮し、国民の生命を守ることを優先させています。動きはスピーディーで、当面の生活費をすぐに現金支給したり、家賃未納で追い出すことを禁止したり、全力を尽くしています。

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