radikoはラジオ界の「救世主」になれるのか 有料会員は70万人に、ライバルはSpotify?

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デジタル音声広告市場の中で特に注目を集めているのが、音楽ストリーミングサービスだ。「ポッドキャスト」と呼ばれる、ラジオの一種に力を入れている。その1つであるSpotifyは、全世界で1億2400万人もの有料会員を抱える音楽サービスだ。

日本では広告付きの無料サービスと980円の有料サービスを展開する。音楽だけで他のストリーミングサービスと差別化することが難しいため、近年は「音楽サービスからの脱却」を掲げている。

Spotifyでは人気ラジオ番組の「オールナイトニッポン」などがすでに配信されている。配信されるラジオ番組数はまだ少ないが、ラジオユーザーはradikoでなくとも、ネット上で聴きたいラジオ番組を聴くことができる。「さまざまなラジオ局に、番組をSpotifyでも配信してもらうよう働きかけている」(Spotify広報担当者)。

オリジナル番組を制作しにくいわけ

さらに、SpotifyやApple Musicは人気芸能人を使ったオリジナル番組も強化している。Apple Musicは人気歌手の星野源が自身の新作アルバムについて語る番組を制作。Spotifyも、若年層を中心に人気を集めるアニメ「ピプノシスマイク」の東京FMでのラジオ番組をSpotify用に再編集し、未公開シーンなども含めて配信している。

ライバル勢のこうした動きに対して、radikoでは今のところオリジナル番組制作に動く気配はない。青木社長は「radikoがオリジナルコンテンツを作らないとは言い切れない」と今後の可能性を否定しないが、radikoで流すコンテンツの主力はラジオ局の番組となりそうだ。

radiko独自のオリジナル番組制作に消極的な理由は、radikoの成り立ちとその構成にある。radikoは「ラジオ局の広告費落ち込みを防ぐ」ことを目的として設立された。radikoの株主44社のうち、39社はラジオ局であり、株主であるラジオ局と競合し、その利益を害するような動きをradikoはとりにくい。

青木社長は次世代通信規格5Gが今後普及していくことを踏まえ、「今後、世の中が通信(の時代)になっていく。その中でラジオ局もさまざまな考えの変化が生じるかもしれない。一つ一つ丁寧に結論を出していきたい」と話し、今後時間をかけながら検討していく姿勢だ。

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