接触機会8割削減策がズレていると考えるワケ なぜ通勤客の削減を重視しすぎてしまうのか

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なぜなら、グループAの半分が残っているからだ。

グループAの「リスクを気にしない人」、「自分の好きなようにやりたい人」は行動を変えない。自粛などしない。だから、全員は自粛しないから、グループBとグループCが変わっても8割は実現しない。

と、ここまでは、真面目な疫学の学者もわかっているだろう。「社会を知らない」と言うのはここからだ。

なぜ東京都のなかで港区が「ダントツ」なのか?

グループAの行動を変えない人々は、いまの文脈ではどうか。もともとリスクの高い人である。活動的であり、夜な夜な飲み歩き、さまざまな「濃厚接触」をし、もともと除菌などを気にかけないような人々である。感染しているリスクが高い上に、さらに拡散するリスクも高い。そういう、「もっとも危険な人々」は自粛をしない傾向が強いのである。彼らをおさえ込まないことには社会全体の感染リスクは低下しない。東京23区の対人口比感染率でみると、ダントツに港区であり、次いで新宿区。その他は大きく引き離されている。

疫学理論の足りない点は、社会の構成員各自のリスクが異なることを、もっと考慮すべき、ということだ。行動パターンについても、行動頻度、広さもあまり考慮していない。約1億2000万人の日本を年齢だけで分類して分析しても、何の意味もないのである。

さらに、現実の彼ら、彼女らの行動パターンも考慮に入れる必要がある。
ここで大変興味深いケーススタディがある。今、ある野党の国会議員が「風俗店」に行って批判を浴びているが、ここで興味深いのは、それを報じた記事の記述である。

具体的には「客は10分の1に減って、働いている子は暇を持て余していた」というところである。つまり、少し広げて夜の店全体で10分の9の客はグループCの客であり、流れで店に行くし、流れがふさわしくなければ行かない。しかし「働き手はいつもよりも暇」、ということは「客ほど減っていない」ということであり、働き手はグループAの割合が高いということである。

それはもちろん、客は単なる楽しみのため、働き手は生活のためであるからそうなのだが、では、肝心のグループAを減らすにはどうしたらよいか。

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