在宅勤務で「転職活動」が活発化する驚きの実態 新卒採用が厳しくなるのとは対照的

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自粛生活で時間ができたことで、自分の将来を考える機会が生まれ、転職市場に登録者が増えてきたのです。

普段採用関連の業務をしている筆者の会社のメンバーも、普段とは違う状況に遭遇しているようです。具体的には、スカウトメールを送ったときに、返信率が明らかに高いのです。

「こんな優秀な人材が……」とCMでも語られるような人材からの転職希望も増えているとのこと。

中途採用へのコロナの影響について、エン・ジャパンが行ったアンケートによると、新型コロナウイルスが流行する中、半数以上の企業が採用を継続しており、現状を好機と捉えている企業が4割もあります。好機と捉えているのはベンチャー・中堅中小企業で、職種は技術系(IT・Web・通信)や営業系が多くなっています。大企業が採用を控え、質の高い人材を獲得しやすいチャンスと捉えているからかもしれません。

振り返ると就職氷河期と呼ばれる時期に、質の高い人材を確保して成長を遂げたベンチャー・中堅中小企業のケースをいくつも見てきました。各社の人事部は、自粛解除後に自社の貴重な人材が流出するリスクがあることを踏まえ、リテンションをしっかり考えておく必要があるのではないでしょうか。

なお経団連は3月30日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策に関する緊急提言を固め、リーマン・ショック時を上回る大規模な対策を検討する政府と足並みをそろえ、雇用の維持に最優先で取り組む姿勢を表明しました。

「第2の就職氷河期世代を作らない」との方針で企業に採用スケジュールの弾力化などで安定的な人材確保を続けるよう働きかけるようです。企業規模にかかわらず、採用戦略の見直しをしっかり考えるタイミングと捉えた施策が期待されます。

自粛解除後に向けた準備を

自粛解除の時期はまったく見えない状況ですが、会社側は解除後に向けた準備を進める必要があります。

新卒採用、中途採用とも、この時期に採用された社員たちは十分な研修等が行えない可能性があります。それでも社員には戦力として活躍してほしい、だとすれば「失われた時間」を取り戻すために、採用後の人材開発で取り組みの見直しが必要かもしれません。

例えば、中止・延期した研修プログラムを自粛解除後に入社した社員とまとめて行う。あるいはこれを機に早期戦力化につながりそうな、プログラムに切り替えてみてもいいかもしれません。

今後、企業が社員に期待する能力が大きく変わるタイミングになるかもしれません。職場で即戦力として活躍してもらうためには、社員が主体的に行動できる力が必要です。そのために「これから起こること」を予測して行動しなければなりません。

ところが、多くの企業では、若手社員には「指示されたことをやる」ことを求めてきました。言われたことをちゃんとやることから始めさせようとする発想です。

でも、その方法では自立するまで時間がかかります。最初から自立を目指した人材を開発するプログラムに変えてもいいかもしれません。自粛解除後に向けて今何をするかが、数カ月後、数年後に大きく響いてくるのは間違いありません。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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