多様性受け入れ消化する。この発想は日本の資源 良品計画金井社長

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 --「わけあって、安い」への原点回帰でしょうか?

原点に戻ることとは少し違う。当然、ブランドの持つ思想は普遍的ですが、時代や環境はどんどん変わる。今の時代に無印って何だろう、良品ってどういうことかと、次の時代に向けてメッセージを出すことが大事です。

 --それが「なるほど」という言葉に集約されるのですか

そうですね。僕は社内で「良心観」という言葉をよく使います。これだけモノが世界中にあふれている中で、生活者の良心観に訴えるものが非常に大事だと思います。

言い換えれば、人間の皮膚感覚で感じられる「なるほど」。これがすごく大事です。無印良品へ来ると、お店の雰囲気にもそういった思想を感じられる。販売している人たちもその思想を理解しているから、自然と無印良品の接し方をしてくれる。そんなことが理想ですね。

僕はこの1~2年ですべての商品が「なるほど」となるように、7000アイテムある商品すべてを見直していくつもりです。

MUJIラベルの
デザイン変更から着手

まず、商品ラベルのデザインを変えていきます。かつてはお客様が進んで読んだ商品の「わけ」も、ブランドが希薄化して誰も読まなくなった。それなら、今の生活者に対して新鮮な内容に変えていく必要がある。無印良品の冠は残しますが、「わけ」を説明する文字を大きくして、目立つデザインにシフトします。

無印良品の思想を広く感じてもらうために、4月末には無料の「なるほど」カタログも発刊します。お客様や社内だけでなく、英文版を用意して、海外の提携工場の人たちにも見てもらいます。無印良品は現場発的な発想が大事です。現場からヒントをもらえるとわれわれのモノづくりは飛躍的に高まります。

モノを作っている人はその本質を知っています。無印が誕生したころは、日本のメーカーにたくさん提案をもらっていました。ところが今は海外に工場がシフトして、現場との距離感が広がってしまった。それを埋めるツールにして、商品力を高めていきたいと思っています。

 --それでも1~2年ですべての商品を見直すのは大変ですね

僕はそう言っていれば、できると思います(笑)。少なくとも社内ではそう言い続けている。でも簡単ではありません。重要なのはその環境をどう作るかという仕組みです。

たとえば、六本木のけやき坂を下りたところにMUJIスタジオという空間を作りました。ここには企画デザインの連中が行っていますが、いろんなメーカーの人たちとワインを飲みながら話をしたり、任天堂の「Wii」でテニス合戦ができる。異分野の人たちとの交流や、自由な空間からアイデアが生まれます。

ウェブ上で商品のアイデアを募る「空想無印」では、透明の貼れる付箋紙が商品化され、計画比1500%の大ヒットとなりました。国際デザインコンペの「MUJI AWARD」からは「その次があるバスタオル」。4月後半に商品化されますが、工場の製造過程の一部が、そのままバスタオルになっているんです。使っていて傷んできたら、ビビッと切って、ぞうきんやバスマットに再加工できるんです。昔の日本の着物のようなアイデアです。

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