グーグル「コロナ対策サイト」一目でわかる凄み データ利活用と個人情報保護の両立が不可欠

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こうした「データの利活用」と「プライバシーの保護」の両立が求められるようになってきた中で発生したのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。

グーグルは、ユーザーの位置情報を匿名化し集計した『COVID-19 コミュニティモビリティレポート』を公開することによって、新型コロナウイルス対策をすすめています。「データの利活用」自体はこのタイミングにおいて重要であることは言うまでもありませんが、その一方でプライバシーが侵害されて、個人が特定されてしまうのではないだろうか、という「プライバシーの保護」に不安を抱く人は少なくないでしょう。

グーグルのミッションは?

グーグルのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」です。グーグルは確かにそのミッションのもとで事業をおこない、私たち消費者に大きな恩恵をもたらしています。それ自体は素晴らしいことです。しかし何のために誰のために世界中の情報を整理するのでしょうか。

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グーグルはその目的、つまりはパーパスを明文化していません。「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」で「データの利活用」を通して広告収入を得ていることを思えば、グーグルの目的とは結局は自社の利益のこと、のように見えてくるのではないでしょうか。従業員や地域社会といったステークホルダーや、「プライバシーの保護」という社会の課題のためにどのように貢献するのか、という点が、つまりは目的が必ずしも明瞭ではないのです。

いま、グーグルは、新型コロナウイルスの感染拡大への対応を契機として、否応なく「データの利活用」と「プライバシーの保護」という相反する命題に、より高いレベルで対峙することが迫られています。世界的に影響力の大きいグーグルだからこそ、より一層「プライバシーの保護」の姿勢や取り組みが問われてくるのです。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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