積水ハウス元会長「株主提案は復讐じゃない!」 元会長と現役取締役が語る株主提案の理由とは

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株主提案で候補とした社外取締役は、ガバナンスやESG、法務など、現在の積水ハウス経営陣に欠けている知見を持つ人々を、信頼できる方々に紹介してもらった。

社外取締役の高い知見で厳しい意見を言ってもらい取締役会を機能させる。会社の方向をどうしていくか議論して、その方針を受けて執行役員が社員と一緒になって進めていくというのが、われわれの考えだ。

和田 勇(わだ・いさみ)/1941年生まれ。1965年に積水ハウス入社。1990年に取締役、1998年に社長就任。2008年に会長兼CEO就任。2018年に取締役相談役、同年退任(撮影:梅谷秀司)

今のように代表取締役が逐一指示を出すのではなく、部署や地域に権限を委譲して、現地のモチベーションを高めていきたい。株主として、会社をいじめることは毛頭考えていない。会社をよくするためにどうすればいいか考えている。

――今回の株主提案に対し、機関投資家やほか株主の反応はどうですか。

和田:われわれの提案に外国人投資家は乗ってきてくれているし、機関投資家は半分以上がわれわれのほうを向いてくれている。取引先の中ではシャープ(株式保有比率は1%未満)など、われわれに賛成してくれているところもある。ただ、株を持ち合っている株主はそうではないところがある。(注:シャープは東洋経済の取材に対し「決まった事実はない」と回答している)

勝呂:持ち合い株主や個人投資家は目的が微妙にずれている。特に個人投資家は日々、売り買いをしているので、ガバナンスを語っても響かないかもしれない。とはいえ、長期で会社が成長し、存続することを念頭においた場合、今の短期志向の考え方では答えが出てこない。一番の原点として正すべきはガバナンスだ。

過半数を社外取締役にすべき

――こうした事態になったものの、社外取締役の存在感が薄いように見られます。

和田:(地面師事件の報告書をまとめた2018年の)あの時点で社外取締役は2人だけだった。それがガバナンスで失敗した理由だ。元阪神百貨店社長の三枝輝行さん、東京都市大学特別教授の涌井史郎さんしかいない。報告書をとりまとめた公認会計士の篠原祥哲さんは社外監査役だった。

三枝さんと篠原さんはいまだに腹が立ってしかたないという。今度、2人は(2020年4月23日付で)退任する。そういうこともあるので、過半数を独立社外取締役にしないとダメだ。

――今、名前の挙がった3人は調査対策委員会のメンバーとして報告書の作成に関与しています。

和田:三枝さんと篠原さん、涌井さんは人事・報酬諮問委員会(6人)の委員でもあった。私が議長で、阿部君を除いて5対ゼロで辞めてもらおうとなった。なのに、それを覆された。

勝呂:人事・報酬諮問委員会が出した結論を覆すなら、説明が必要だ。株主の要求がなくてもきちんとした形で、取締役会が覆した理由を説明する必要がある。

――当時、阿部さんの退任が否決されて、和田さんの解任動議が出て、自身の退任を決めた。本来はあのとき、反対の声をあげるべきだったのではないでしょうか?

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