コロナ対策で支援すぐ広がる「アメリカ」の強さ ハイリスク層や貧困層向けの支援が次々と

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ホームスクールは国への登録の義務がないため、正確な数は把握しにくいとされているが、現在全米で推定150万人を超える子どもたちが、この方式で学んでいると言われている。筆者の地元、North Kitsap郡の学区に問い合わせたところ、同地区でもコロナウイルス問題によって、ホームスクール移行を希望する人が増えているとのことだった。

また、私立や予算のある学区の中にはオンラインに授業を切り替えて、「授業を止めずに続ける」という学校も出てきている。ブレマートン市にあるProvidence Global Academy(以下、PGA)は、そんな中でもユニークな学校の1つだ。

「こんな形で役に立つ日が来るとは」

この学校は全米でも珍しい「ライブ・イン・クラス」という仕組みを使って、主に海外の学生に向けてオンライン授業を行う高等学校。

「ライブ・イン・クラス」というのは、遠隔地にいる学生でも、時差さえ自分で調整すれば、アメリカで行われているPGAの提携校の授業に参加できる仕組みを指す。教師への質問やクラスメートとの交流など、インタラクティブな形で学ぶことができることで、病気やケガなどさまざまな事情から学校に通えなくなった子どもにとっても、プラスが多い仕組みだ。 

同校ではコロナウイルスによる周辺学校の閉鎖に伴い、ライブ授業の提供元である小中校一貫校Cross Point Academy を含む数校に、「ライブ・イン・クラス」を使って、オンライン授業を提供する準備を進めている。

この仕組みを使えば、生徒たちはクラスメートたちと共に、自分の学校の担当教員から普段と同じ授業を受講できる。受講方法はネットにはなるものの、いつまで続くかわからない自主隔離状態の中にあって、子どもたちへのメリットも大きい。

同校の学院長、ニック・スウィニー氏は言う。

「主に海外の学生たちに向けた自分たちの授業運営の仕組みが、こんな形で役立つ日が来るとは思ってもみませんでした。子どもたちは未来への希望です。そして教育はその子どもたちの基礎を作ります。その基礎作りは本来、何があっても止まってはいけません。教育を子どもたちに届ける方法は、あらゆる意味で『多様』である必要があることを、今回の件で改めて確信しています」

奇しくも時代は次世代移動通信「5G」の本格導入に向けて、進もうとしている。スウィニー氏が忙しそうに授業準備に追われている様子をみながら、ひょっとしたらコロナウイルスの蔓延が、オンライン学習市場の活性化につながるのかもしれないと、感じた。

ジュンコ・グッドイヤー Agentic LLC代表、Generativity Lab代表

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Junko Goodyear

アメリカ在住。青山学院大学卒業。日本にて約20年の企業経営のち、現職。日本企業のアメリカ進出、アメリカ企業の日本進出のコンサルテーション&サポートほかを行っている。シアトル近郊最大の子供劇団のひとつ『Kitsap Children’s Musical Theatre』顧問を務めながら、次世代継承と・社会還元共有型マーケティングを考える『ジェネラティビティ・ラボ』も主宰している。

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