FRBの金融緩和にみるコロナショックの深刻度 「ゼロ金利」と「量的緩和」に追い込まれたFRB

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モルガン・スタンレーのストラテジスト、マシュー・ホーンバッハ氏は「今回のQEは従来の目的とは異なり、財務省証券とMBS市場における流動性の緊張に対処したもの」と指摘する。公定歩合や預金準備率の引き下げは、銀行の資金調達に対するストレスを緩和するのに役立つという。

FRBは3月3日に0.5%の緊急利下げを実施し、12~13日の2日間に短期金融市場に1.5兆ドル規模の追加資金供給を行うなど、異例の流動性供給を行っていた。わずか10日余りで追加緩和を迫られた格好だ。

コロナウイルスがもたらす経済的試練

逆に言えば、それほど金融市場の緊張が高まっていることを意味している。みずほ総合研究所欧米調査部の小野亮・主席エコノミストは、「CP(コマーシャルペーパー)のスプレッドが急上昇するなど民間企業のクレジットがタイト化しており、ファンドも含めた資金繰り破綻や金融機関の資金調達難が起きないよう、FRBはいち早く救済の手を差し伸べ始めた」とみる。

新型コロナショックがリーマンショックのような金融危機にならないよう、FRBの危機感は高まっている。

今回の新型コロナショックが発生するまでは、アメリカ経済は堅調な足取りを続けていた。パウエル議長は今回、「2月の失業率は3.5%と約半世紀ぶりの低水準にあり、新規雇用者もしっかりしたペースを保ち、全体の経済活動も穏やかに拡大していた。アメリカの銀行は高水準の資本と流動性を備え、良好な与信態勢にあった」と述べている。

ところが、そこへ「ウイルスが重大な経済的試練をもたらした」(パウエル議長)。ヨーロッパからの入国禁止などの感染抑制策は短期的に経済活動へ大きな影響を与える。

すでにエアラインやホテル、旅行関連のビジネスは急激な落ち込みを示しており、売り上げの急減で資金繰りすら懸念される。海外諸国での感染拡大と景気悪化はアメリカ企業のサプライチェーンや輸出に悪影響を与え、原油価格の急落によって、シェール関連などのエネルギー業界も苦境に陥りつつある。

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