「巣ごもり消費」が広がる中国の寒すぎる現状 1~2月の経済急悪化に中国の記者も仰天

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中国の消費が極めて低調なのは社会消費品小売総額の数字からも明らかだ。分野別にみると、営業が大きく制限されたレストランは43.1%減とさんたんたる状況。自動車が37.0%減、家電販売が30.0%減、家具類が33.5%減と厳しい数字が並ぶ。変わったところでは金銀宝石も41.1%落ちこんでいる。 

国家統計局が2月29日に発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は35.7と、1月の50.0から大きく下げた。企業の景況感を、50を分かれ目として表現するもので景気の先行指標とされている。同時に発表された2月の非製造業PMIは29.6(1月は54.1)と、製造業より一段悪かった。小売り、サービス分野では今後の見通しがかなり厳しいということだ。

デジタル関連は好調だが・・・

この状況で、中国政府が期待するのはデジタル分野だ。ネット経由での物品販売は前年同期より3.0%伸び、社会消費品小売総額の21.5%(前年同期より5%ポイント上昇)を占めるに至った。国家統計局の毛氏も「インターネット経済の勢いは変わらない」と強調する。

アリババ、京東集団(JDドットコム)といった中国の電子商取引(eコマース)大手が飛躍したのも、SARS流行によって自宅にこもった人々がネットで買い物をした「巣ごもり消費」がきっかけだ。今回も、さまざまなオンラインサービスが成長のチャンスをつかんだ。

例えばアリババ傘下のリモートワークのプラットフォームである釘釘(Ding Talk)は、オンライン授業に採用されることで企業のみならず教育機関にも一気に普及した。現在では中国全土の14万校、1億2000万人の学生に使われているという。こうした現象はeコマース、医療、ゲームなどさまざまな分野で起きている。

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デジタル関連の好調は生産にも表れており、1~2月には3Dプリンターやスマートウォッチなどの電子製品の生産量が2倍以上となった。太陽電池や半導体の原料となる単結晶シリコンの生産量、多結晶シリコンの生産量はそれぞれ45%、35%増加したという。

新型コロナがもたらした「巣ごもり消費」は中国のデジタル経済をいっそう加速させるかもしれない。しかし、1~2月の数字を見る限り、上半期の成長率は非常に厳しいものになるのは間違いない。今後のV字回復を演出する思惑があるのかもしれないが、この状況で5%を超える成長を実現するには、そうとう大規模な景気刺激策が必要となるだろう。はたして現在の中国にそれが可能か。新型コロナ制圧をうたう中国政府の宣伝とは異なり、経済の内実は相当に厳しい。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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