ユニクロ、"パート正社員化"へ2度目の挑戦 1.6万人を地域限定正社員へ。今度はうまくいくのか

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前回の反省に基づき、柔軟な対応を行う姿勢は評価できる。ただし懸念がある。地域限定正社員の道を選んだスタッフは、将来的に店長になる可能性もあるという。ユニクロでは現在、成長戦略の軸足をアジア、欧米など海外へと移している。大量出店戦略を進めるうえでのボトルネックになっているのが日本から送り込む人材の不足だ。国内のベテラン店長を海外店舗戦略へとスムーズにシフトするためにも、少なからぬ地域限定正社員が店長に昇格すると考えられる。

店長になれば残業代なし

店長になると大きな責任を負うと同時に、残業代が支払われなくなる。ユニクロでは以前から店長を、残業代などが生じない労働基準法上の「管理監督者」と位置づけ、「一国一城の主である経営者」とみなしているためだ。新しい人事制度の設計で検討されている「ライフワークバランスを考慮する」方針と、柳井正会長兼社長が語る「生産性を高め利益責任をさらに明確化する」方針は両立できるだろうか。

3月から、人事や営業の担当者が、対象となるパートやアルバイトとの個別面談を始めており、順次、地域限定正社員へのシフトが始まる。今後、2~3年をかけて段階的に1万6000人の正社員化を進め、現在3400人の社員は2万人程度になる計算だ。正社員化を進めることで、福利厚生費などの人件費負担は1人当たり2~3割増えると試算しており、大幅なコスト増になる。

スタッフが定着することによる採用コストの抑制、アルバイト訓練費用の削減、習熟したスタッフが増えることによる生産性向上なども考えられるが、総人件費は増加すると考えるのが自然だ。そのことを覚悟した上での方針転換であれば、歓迎すべき施策といえるだろう。

ただし、前述のように過去にも同様の施策を打ち出したことがある。今回は貫徹できるのかどうか、その推移を見守る必要がありそうだ。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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