コロナ騒動波及「横浜中華街」厳しすぎる現実 客足が激減、売り上げが3分の1になった店も

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石河氏によると、近年中華街の来街者数は緩やかながら伸びていた。背景には、春節を含めて年間を通じてお祭りが多く、メディアへの露出が増えたことや、2013年3月にみなとみらい線と東横線が、東京メトロ副都心線との相互直通運転を始めたことで、埼玉県などからも訪れやすくなったことがある。

近年は「マリン アンド ウォーク ヨコハマ」や「横浜ハンマーヘッド」など、みなとみらい地区に大型商業施設やオフィスビルなどが増えており、近隣地域を訪れる人も増えていた。

また、「中華街の店舗は5年で3分の2が入れ替わると言われるほど新陳代謝が激しい。焼き小籠包やタピオカなど、その時々に流行している飲食店があり、いつ訪れても新しいという印象があるのが来街者増につながっていた」(石河氏)。

人が減った期間を利用してできることをやる

ところが、昨年10月の台風19号でツアー客のキャンセルが出ていたのに続き、今回新型コロナウイルスの報道が出始めてから状況が一変してしまった。

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先が見えない状態が続く中、発展会では厚生労働省の発表に基づいた新型コロナウイルス予防策などを横浜中華街の加盟店以外にも印刷して配布しているほか、横浜銀行など地元の銀行3行に要請し、飲食店向けの融資商品を提供してもらうといった支援策に取り組んでいる。また、この時期を利用して、日本人向けの接客や海外客向けの英語などを学ぶセミナーを開く案も出ているという。

招福門でも、新規メニューの開発や、新しい調達先の開拓のために農家を訪れるなどしているほか、従業員に中国茶関連の勉強や資格取得を勧めるなど、通常ではなかなかできないことに取り組んでいる。

横浜中華街はこれまでも、SARSや中国製ギョーザ中毒事件など、中国に関連した感染症や不祥事が起こるたびにその影響を受けてきた。加えて今回は横浜という立地、そして日本全体に広がる自粛ムードが重なってしまった。最近では老舗店に中国人を誹謗中傷する手紙が届くなど、事態は深刻さを増している。感染拡大を抑止する必要はあるが、風評被害や過剰な自粛による影響はすでに横浜随一の観光スポットを苦しめている。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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