「吉野家」復活といきなり!ステーキ失速との差 経営者の「勘」頼みで300店の壁は超えられない

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訴求の仕方も変容している。以前は、テレビCMを連発するなどマス(すべての消費者)を対象にした手法が主流だったが、「最近はスマートフォンのアプリやSNSでポイントとクーポンを駆使して来店にむすびつけるなど、個へのアプローチが重要になっている」(エース証券の澤田遼太郎アナリスト)。

おいしい商品さえ作れば売れる時代ではない

おいしい商品を作りさえすれば売れる。そんな時代はとうに過ぎ去った。エース証券の澤田アナリストは、「最近は『インスタ映え』することが重要になっている。パッと見て、おいしい商品かどうかが伝わるものでなければならない」と、見せ方にも工夫が必要であることを説く。ここにきて復調している吉野家は、「商品がポスターで映えるかどうか」を最初に想定して、商品戦略を練るという。

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外食産業には課題も山積する。店舗運営のオペレーションを担うパート・アルバイト不足が深刻化、中食(総菜)産業との「胃袋の奪い合い」も激しさを増す。

外食産業はもともと、製造業のように規模の拡大に比例して収益も高まっていくのではなく、店舗数が300を超えたあたりの一定規模で売上高のピークを迎えるチェーンが少なくない。1年で店舗数を倍増させるような拡大路線を突き進み、2018年に250店舗を超えたごろから「いきなり」失速したいきなり!ステーキがよい例だ。

数々の課題を乗り越えて、顧客を引き留め続けることができるチェーンはあるのか。マクドナルド、スターバックス、吉野家、ケンタッキーフライドチキン、丸亀製麺、そしてガスト。こういった新しい勝ち組の戦略をつぶさに見ると、外食チェーンの今後の展開を占うことができる。

『週刊東洋経済』2月29日号(2月25日発売)の特集は「外食 頂上決戦」です。
梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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