第1回 製造業の地産地消で、海外勤務は必須

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質問1 今後、海外で勤務しなくてはいけませんか?

これは不可避だと思います。
 最近は、製造業の製品も「地産地消」の考え方が浸透してきています。つまり販売国のニーズによりマッチするように、その国の国内や近隣地域で研究開発・設計して製品化する傾向が強くなってきたのです。

例えば、自動車では、アメリカで販売する日本車はアメリカで生産し、アセアンで販売する日本車はタイ、インドネシアなどのアセアンで生産し、という具合に、なってきています。

 ほかにも、インドで販売している日本メーカーの冷蔵庫は、蓄電器やコスメティックボックスを内蔵しているという例があります。これは、頻繁に停電になったり、口紅などの化粧品が暑さで溶けてしまうといったインドの事情を考慮して開発されたものです。

 こうして日本企業は活動範囲を広げるなかで、多国籍化しています。この流れは、今後も止まらないし、日本人も海外に出て行かざるをえないと考えられます。

 海外拠点では海外の人を雇うということにすれば、日本人がその地域に出て行くことはないじゃないか、と考える人もいるかもしれません。

確かにそうですし、実際そうなっています。しかしそれは、日本人に割り当てられる雇用が減るということを意味します。

日本企業が日本人を雇う、という時代は終わって、日本企業がいろいろな国の人を雇う、という時代になっています。いろいろな国の人と、職をめぐって争うという構図になっているのです。

現実に、日本企業が製造拠点を海外に移すにつれて、地域から雇用の場が消えています。『これから5年の競争地図』のなかでは、鹿児島県出水市と群馬県大泉町で起きた工場の撤退事例を紹介しています。

人口減少などで国内市場が縮小(=雇用の場も減少)しているなかで、さらに他の国の人たちとも仕事をめぐって競争するという、厳しい競争環境が生じています。

ちなみに、若い人の雇用機会が少なくなっていることは、日本だけの問題ではなく、世界的な問題となってきています。ILO(国際労働機関)の発表では、若年者の失業率は先進国全体で18.3%です。

若いうちに仕事に就いて自分のスキルを高める機会を得られないことが、大きな懸念となっています。

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