乗客減でも収入維持、「異業種」鉄道会社の戦略 地域の活性化に一役買う「京都丹後鉄道」

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北近畿タンゴ鉄道は開業以来黒字になったことはなく、20期以上連続で赤字を計上しており、京都府や沿線自治体、兵庫県から毎年4~5億円の欠損補助を受けて経営を維持していた。京都府や沿線自治体並びに兵庫県も財政事情が厳しいことから、抜本的な改革が求められていた。

そこで北近畿タンゴ鉄道は、インフラの保有と列車の運行を分ける上下分離経営によって鉄道事業の再構築を図るため、運行事業者を公募。その結果、高速バス運行で知られるWILLER ALLIANCEが選定され、同社がWILLER TRAINSを設立した。そして2015年4月1日より、地域公共交通活性化再生法による「鉄道事業再構築事業」として認定され、上下分離経営を実施することになった。

これにより北近畿タンゴ鉄道は、インフラのみを保有する第3種鉄道事業者となり、列車の運行はWILLER TRAINSが「京都丹後鉄道」の名称で実施するようになった。

途中下車のできる観光列車

京都丹後鉄道の観光客誘致施策の目玉は、観光列車「丹後あかまつ号」「丹後あおまつ号」と、レストラン列車の「丹後くろまつ号」である。

リニューアルされた一般車両と連結して走る「丹後あかまつ号」(後)(写真:そら/PIXTA)

車両はいずれも北近畿タンゴ鉄道時代に、従来車を天橋立の白砂青松を象徴する「松」をテーマとしたデザインに改装したもので、「あかまつ」「あおまつ」は2013年4月から、「くろまつ」は2014年5月から運行を開始した。京都丹後鉄道へ移管されてから、サービス内容がグレードアップしている。

「あかまつ」「あおまつ」は木目調のインテリアで、座席はソファ席や海側を向いたカウンター席など、さまざまなタイプの座席がある。「あおまつ」は普通運賃のみで乗車でき、毎日運行している。「あかまつ」は、日本三景の1つである天橋立―西舞鶴間を結んでおり、運賃と550円の乗車整理券で利用できる。

特徴的なのは、「あかまつ」のうち西舞鶴13時44分発の3号は、丹後由良駅で30分停車して街の散策ができる点である。駅周辺には足湯があったり、徒歩10分の場所に造り酒屋があったりと見どころがあるため、列車のアテンダントが駅周辺の地図を配布している。

乗客が駅周辺施設を訪問することで地域にお金を落としてもらえれば、鉄道を利用しなくても、鉄道が存続することで便益を享受する層が生まれることになる。

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