武田薬品の広告が患者に与えた不利益は甚大 CASE-J試験の疑惑を指摘してきた桑島巖医師に聞く

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エンドポイント(評価項目)の内訳を見るとわかるが、カンデサルタンが優位な狭心症やTIA(一過性脳虚血発作)などは、客観性の乏しいエンドポイントである。これらの項目には臨床試験にかかわった医師の主観が働きやすく、この点でも企業支援による非盲検試験に特有の問題点が浮かび上がってくる。

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武田薬品が『日経メディカル』に出稿した企画広告

――学会発表データを元に武田薬品の企画広告で作成されたグラフでは、治療を開始して36カ月まではアムロジピンを投与した患者のほうが心血管イベントの発症率が少なかったものの、36カ月を境に逆転し、カンデサルタンのほうが好成績になっていました。

 試験開始からしばらくの間はアムロジピン群のほうが血圧の低下が大きいから、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントの抑制に効果があったと考えられる。それが途中から逆転することは考えにくく、何らかの操作の疑いを抱かせる。グラフの形もきわめて不自然だ。(CASE-J試験の運営を受託した)研究センターから発行されたニュースレターをみると血圧が高い場合には併用禁止薬を投与してよいことになっているが、それらを統計上どのように扱ったかが問題である。

薬事法違反の誇大広告に該当も

――武田薬品は、学会発表のデータを販売促進活動に使用したことは、日本製薬工業協会のプロモーション規約に違反する不適切な行為だったと認めました。

 それ自体はそうだろうが、薬事法違反の誇大広告にも当たるのではないか。アムロジピンのほうが薬の値段が安いうえに、降圧効果が大きい。にもかかわらず、誤った情報を元に、カンデサルタン服用にメリットがあると最近までPRしてきたのだから、患者さんに与えた不利益はきわめて大きいと思われる。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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