開成の入試問題に「大江戸線」が出題された意味 直前に暗記で詰め込んでも太刀打ちできない

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「優秀児の囲い込み」は上場企業の塾や、関東・関西両方に拠点を持っている塾が積極的に行っています。優秀層を関東、関西のトップ校に合格させることで見かけ上の実績をよくすることができます。そうすると、多くの生徒が数字を見て入塾するのです。

本当に優秀な子たちは対策が不十分であっても関東、関西両方のトップ校に合格するのですが、多くの場合、関東の生徒は関東の有名校に進学し、関西の生徒は関西の有名校に進学するので、行かない学校には入学手続きを行いません。

すると、辞退者が大量に出て欠員が生じるので学校としては補欠合格を出すことになります。それが何十人にも上るということが開成中でも起こっています。入学意思がまったくない子たちの受験が多いことについて、開成の先生も苦々しく思っているかもしれません。

あえて東京出身ならば解ける問題を出す

そこで東京問題と呼ばれる、あきらかに東京の生徒であれば常識であるような問題が出されているのではないかと塾業界では噂されていました。とはいえ、社会の70点満点のうちの数点ですから合否に大きな影響を与えることはありません。ただ、入学する意思もないのに関西からツアーで受験する子たちが大挙してやってくることへの不満を表明した問題ではないかというのです。

さて、問題の解説に入りましょう。答えは「ウ」で、たしかにどちらに乗っても着きます。環状線であれば当然そう言えます。例えば山手線でも、内回りに乗っても外回りに乗っても必ず目的地に到着することはできます。

ただ大江戸線は純粋な環状線ではありません。大江戸線は図のように、環状部と放射部からなっています。都庁前から六本木や両国や飯田橋を回ってくるっと1周するという部分に加えて、練馬や光が丘といった郊外に向けて放射状になって延びている線もあります。まるで数字の6を描くような作りになっているのです。

いったいなぜ大江戸線は6の字のようになっているのでしょうか。もともと環状線だけでなく新宿から先の練馬・光が丘に地下鉄を造ろうという理由があったのです。これは高度経済成長期と関係があります。

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