京王線新宿駅で働く、身長30㎝「新駅員」の正体 外国人客対応もOK、人手不足解決の切り札に

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実際、下北沢レイでも対応できない質問がまだ多数存在し、「まだ勉強中です」と答えることもしばしばある。例えば、利用者に合わせて周辺施設へのルートを案内する場合、基本的に最短距離を示すことが多く、高齢者向けに坂道があることへの配慮などはまだできない。そのため、現在は窓口の対話を分析し、不足分を付け足していっている。それでも同社駅マネジメント事業推進部の松井雅宏担当部長は「50年以上、駅のシステム事業を手掛けてきたノウハウを生かしたい」と今後の開発に自信をみせる。

オムロンは一般的に体温計や体重計、血圧計などヘルスケア関連事業を手掛ける会社として知られている。だが、実はヘルスケア事業は約8600億円になる同社全体の売上高の約13%にすぎず、大半を占めるのは工場の生産工程を自動化するシステムであるFA(ファクトリーオートメーション)向けの制御機器や社会インフラ関連のシステムなどだ(いずれも2019年3月期の実績)。

駅システム全体の効率化も想定

オムロンは現在、事業ポートフォリオを大きく変革しようとしている。2019年3月期に売上高の15%を占めていた車載事業は、2019年10月に日本電産へ売却。今後は主力のFA関連機器とヘルスケア、社会インフラの3領域に注力する方針だ。

オムロンの鉄道業界における存在感は大きい(記者撮影)

社会システム事業は同社の売り上げのうち約9%と大きくないが、特に鉄道業界での存在感がある。駅の自動改札機や券売機など駅務機器の国内シェアは約5割。運用管理や情報案内システムのほか、駅の安全・セキュリティシステムを手掛けるなど、鉄道各社の駅業務全般をサポートしている。

そのため同社は単に駅案内ロボットを製造するのではなく、駅システム全体の効率化を図ることを想定して案内ロボットの商品開発にのぞんでいる。「いずれは券売機や改札機などとも連動させていきたい」(大串氏)と意気込む。

現在、人手不足による駅の省人化や老朽化に伴う設備更新など駅システムには新たな需要が生まれつつある。オムロンは、センサーなどを用いて利用客の危険防止につなげる遠隔監視システムや窓口業務の自動化など「スマートステーション」を模索しており、同分野で成長を継続できるかがポートフォリオ変革の成否を占うことになりそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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