アベノミクスの円安効果に「誤算」

輸出・物価への効果一過性の懸念

3月3日、アベノミクスに大きな成果をもたらしたと内外の市場関係者から認識されたきた円安。だが、足元ではその効果に対し、疑問符が付くようなデータが連続的に出てきている。写真は2010年2月、都内で撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 3日 ロイター] -アベノミクスに大きな成果をもたらしたと内外の市場関係者から認識されたきた円安。だが、足元ではその効果に対し、疑問符が付くようなデータが連続的に出てきている。

期待されていた輸出数量の増加効果はいつまで待っても出て来ず、貿易赤字の膨張と経常黒字の縮小要因の1つに浮上。それが設備投資の伸び悩みにもつながってきた。さらに2013年10─12月期になってもGDPデフレーターはマイナスのままで、輸入物価上昇によるコスト転嫁が十分に進んでいないことも示した。今年の春闘における賃上げが一部の業績好調な大企業に限定されれば、円安の最大の効果である「期待」もしぼみかねず、円安効果の持続性に対しても懸念が高まっている。市場の一部には「円安は万能薬ではない」との声も出てきた。

輸出数量、主要品目はむしろ減少傾向

「消費増税後の内需落ち込み時期に、このまま輸出が低迷すれば、相当ひどいことになりかねない」と、政府・日銀とも自らのシナリオに危機感を抱きはじめている。13年後半には輸出が高まるとの期待を持っていたが、7─9月、10─12月と外需はマイナスが継続。輸出が成長の足を引っ張る構図が出来あがってしまったからだ。

円安は輸出型産業を中心に円ベースでみた売上高に寄与、企業収益は増加したが、GDPベースの輸出は数量の概念だ。13年中、ドル/円レートは27%近く円安に振れたが、数量ベースでみた実質輸出の水準は年間を通じてほぼ変わらず、円安効果は輸出数量にはほとんど表れていないことを示している。

確かに新興国経済の停滞で、13年中は需要自体が伸びなかった面もある。海外経済が回復すれば、それに応じて輸出数量もある程度伸びることは期待できそうだ。しかし、輸出の伸び悩みはいつの間にか静かに進行してきた現象だ。

貿易統計をみると、日本経済のけん引役となってきた主要輸出品目の状況が、予想以上に悪化していることがわかる。自動車(普通・小型乗用車)の13年の輸出台数は、リーマンショック前の07年の7割弱。工作機械の外需受注額は、2011年をピークに年々減少し、今年1月のアジアからの受注は前年比半減、落ち込みは止まらない。半導体電子部品や半導体製造装置もすう勢的に減少し、それぞれ13年の輸出額は10年の85%、57%に過ぎない。

背景に海外への生産移転があることは、言うまでもない。国際協力銀行の調査では、13年度の海外生産比率は34%を超える見込みで、円安が進行する中でも、この1年でその比率は高まっている。その結果、国内設備投資は本格回復に至らず、10─12月期法人企業統計では足元で前期比2四半期連続で減少している。

海外需要の増加に伴って、従来通りのペースで輸出が回復する保証はなさそうだ。政策当局は、輸出数量の停滞が、外需自体によるものか、それとも構造的な要因なのか、慎重に見極め、要因に応じた対応を採ろうとしている。

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