日産がルノーへの態度を変えた切実な事情 穏健派の内田新社長、提携見直し棚上げも

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「アライアンスに憧れて日産に入社した」というだけあって、内田氏はアライアンスを経営戦略の根幹に据える考え方の持ち主だ。記事冒頭の発言からわかるように、過去のアライアンスの実績についてもかなり肯定的で、対ルノーの点では「穏健派」と言える。

ルノーとの提携に社内から不満の声も

その一方で、日産社内にはルノーとの現状の提携を疑問視する意見も根強い。先端技術などでルノーは日産に依存しているにもかかわらず、資本関係ではルノーが圧倒的優位に立つためだ。

2020年後半に投入するとみられる新型EVのコンセプトカー「アリア コンセプト」の前で成長戦略を語る内田新社長(撮影:梅谷秀司)

実務面でも日産の新車開発にルノーから横やりが頻繁に入るなど、特に開発部門ではルノーへの不満が溜まっていた。「アライアンスによる協業効果が最も現れているのは、部品や資材などを共同で調達する購買分野。購買部門出身の内田さんはアライアンスのいい側面しか見えていないのではないか」(日産関係者)との声も漏れ聞こえる。

内田氏がルノーへの配慮を強めすぎると、日産社内での求心力を失う可能性もある。

ゴーン時代に経営統合を暗黙の前提として進められてきた、開発や人事など両社の主要機能を一本化する取り組みについて、前体制と同様に内田新社長の下でも見直し路線を継続していくのかも注目だ。

一時はフランス政府が前面に出て経営統合への要求を強めたルノーも、最近では鳴りを潜めている様子だが、日産との経営統合を諦めたわけではない。内田氏は当面は業績回復に集中できるとしても、いずれアライアンスをめぐる重要局面が必ずやってくるはずだ。その時にどう動くのか。53歳の新社長の指導力が問われている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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