「日本式」ジャカルタ地下鉄、開業半年の通信簿 定時運行率ほぼ100%、停電時も迅速対応

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しかしながら、2016年4月より始まったこれらの支援は2019年11月で一旦終了となる予定だ。 ゼロからの鉄道事業を開始したMRTJにとって、開業からわずか半年で支援が終了してしまっては十分とはいえないだろう。

MRTJ開業をきっかけに公共交通網の拡大だけでなく、「誰にでも乗りやすくする」というソフト面での意識改革にもつながっている。写真はMRTJ、KCI、LRT、空港鉄道、BRTを含む広域路線図が掲出され、改修されたバス停(筆者撮影)

もちろん、これまでの成果を踏まえて支援の延長を、という声も出ているようではあるが、そんな中でMRTJは日本国内に限らず、アジアを中心とした他国の鉄道からもノウハウを吸収しようとしている。

開業前から交流のあったシンガポールの地下鉄運営会社SMRTのほか、香港で都市鉄道を運営するMTR(香港鉄路)、さらにはジャカルタ―バンドン間に建設中のKCIC(インドネシア中国高速鉄道)などと、鉄道運営管理協力や公共交通指向型都市開発の覚書を結んでいる。

必ずしも日本優位ではない

KCICはさておき、いわばアジアでお手本のような都市鉄道を運行している各社は、他国からの人材受け入れに慣れており、とくに香港MTRは外部研修専門の部署を持っている。さらにSMRTはジャカルタに駐在事務所を開設した。

MRTJには日本式の自動改札機が採用されているが、QRコードによるアプリ決済サービスも近く開始される予定だ(筆者撮影)

確かに日本の鉄道技術は優れているかもしれないが、インドネシア、そしてMRTJのような都市鉄道に合致しているかと言えば、そうとは限らない。

例えば、各駅に発車時刻を表示して走らせることが果たして正解なのか。最近、山手線のホーム上の案内が発車時刻ではなく、次の電車が到着するまでの時間を表示するようになったが、種別や行き先が単一な海外の都市鉄道ではもともとこのような表示の方が圧倒的に多い。

2024年の開業を目指して着工するMRTJ南北線の第2期区間までは本邦技術活用案件として整備が進められるため、ひとまずは安泰のようにも見える。だが、最大の懸案事項はその先のMRTJ東西線事業だ。2013年にJICAが事前準備調査を実施しているものの、その後、整備スキームを含め、事業化については白紙のままである。

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