英語民間試験に「NO」を突きつけていた7大学 国に逆らった大学は正しかった

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以上、英語民間試験を利用しない(必須としない)7校を見てきた。これらの大学が英語民間試験を利用しない理由は、そのまま、11月1日に文科省が同試験の導入延期を発表した際の説明と重なる。

これは先見の明があったということではない。公平性、公正性が維持できないと考えた大学からすれば、英語民間試験を利用しないのは当たり前の判断だった。現実に、延期という事態になったことを考えれば、7校の判断は正しかったと言える。

認識にズレがあり当事者性が感じられない

しかし、お上には逆らえない、にらまれたくはないという思いから、「同試験を利用しないとは言えなかった」という大学もある。これは複数の学長、大学事務局長から聞いた話である。

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大学は国がおかしな政策を進めようとしたら、もっと声を上げていいのではないか。しかし英語民間試験導入の延期決定を受けた、国立大学協会長・永田恭介筑波大学長のコメントは残念なものだった。

「国立大学協会としては、これまで受験生の経済的な公平性の担保について直接文部科学省にもお願いしてまいりましたし、文部科学省も改善に向けて活動されていたと承知していたところであり、残念であるとともに驚きをもって受けとめております」

他人事で当事者性があまり感じられない。「改善」という認識があり、「残念」と受け止めている。しかし、これでは不安に思う受験生、高校の感覚とズレる一方だ。

受験生のことをしっかり考える、何か起こりそうならば心配して対応する。そういう姿勢で国は入試制度を整備してほしいし、大学は入試を行ってほしい。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)

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