東京五輪サッカー代表が直面する選手招集問題 森保監督の最強チーム結成には、難関がある

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加えて言うと、IMDの選手拘束力はA代表の選手のみ。つまり、東京五輪世代のU-22代表に関しては強制できないということになる。その状況を打開するには、日本サッカー協会のスタッフが選手の所属先を足繁く回って事情を説明し、理解を取り付ける必要がある。

今夏からポルトガル1部のマリティモにレンタルで赴いた前田大然などは、移籍に当たって「東京五輪に向けたU-22代表の活動に協力してほしい」という要望を出し、了承を得ている模様だ。

けれども、全ての選手がそういった前向きな状況にあるとは限らない。例えば、レアル・マドリードからレンタル移籍中の久保のように、現所属先と保有権を持つクラブが違う選手の場合は厄介だろう。久保を取り巻く現状は定かではないが、レアル側は「東京五輪に出て名前を売ってほしい」と考えているとしても、スペイン1部で最下位に沈んでいるマジョルカにしてみれば「チームに残ってコンディションを整え、今後のリーグ戦で活躍してほしい」と望んでいることもありうる。

それはマンチェスター・シティ(イングランド)からレンタル移籍中の板倉や食野亮太郎(スコットランド=ハーツ)も同様ではないか。そういった思惑が絡み合うと、選手の代表活動参加は難しくなりがちだ。

欧州では五輪はそこまで重要視されていない

そもそも欧州では「五輪はあくまでU-23(23歳以下の大会)」という位置づけで、そこまで重要視されていない。その現実も森保監督の代表強化を困難にしている。「五輪のために毎月のようにチームを離れるのはどうなのか」と疑問視するクラブ関係者は我々が想像する以上に多い。

監督や強化部スタッフがそういうネガティブな考え方を持っていたら、その選手は代表招集を許可されなかったり、許可されたとしてもクラブでポジションを失うリスクはかなりある。欧州組が五輪代表活動に参加するのは、そのくらいハードルの高いことなのだ。

今回の11月に限っては、「IMD期間であり、日本との単純往復だから、心身両面での負担がそこまでかからない」という理由からOKが出たと見られるが、今後はどうなるか分からない。U-22日本代表は12月28日に長崎で親善試合を消化し、1月にはAFC・U-23選手権(タイ)に参戦。3月以降もIMDやトゥーロン国際トーナメントなどにで強化を図ることになっているが、そこに誰を呼べるかという見通しも全く立っていない。

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