PHSのウィルコムが剣が峰、事業環境の激変で次世代サービスにも黄信号

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全国サービスを展開するには巨額の設備投資が必要になる(表参照)。同時期に2.5ギガヘルツ帯の周波数免許を取得したKDDI系のUQコミュニケーションズは、すでに7月から高速ブロードバンドサービスを始めている。 

 さらに今後は、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンク、イー・モバイルなど携帯各社がみな次世代のモバイルブロードバンドサービスを計画しており、体力のある大手キャリアとの厳しい競争が待ち構える。実は、ウィルコムが次世代PHS用に使う周波数帯は、4社が利用申請し、ウィルコムとUQコミュニケーションズが取得したもの。07年当時、総務省の事業計画審査で「継続的運営に必要な財務的基礎が充実」との項目で最も高い評価を得たのがウィルコムだったのだから、皮肉としか言いようがない。

かねてウィルコムは次世代PHSへの投資は既存事業からのキャッシュフローで賄うと説明してきた。しかし「サービスの特長が薄れてきたうえ、奨励金などのインセンティブもあまり出ないとなると、売り場では厳しい」(携帯販売代理店幹部)との声が上がる。特色のあるサービスを打ち出し、次世代サービスでどこまで巻き返せるのか。

昨年のリーマンショック後、業界内では同社のスポンサー探しのうわさが何度も流れた。「次世代の事業免許をもらったことがかえってアダとなった。負債と投資計画が重荷となっている。現状では手を挙げるスポンサーは出てこないだろう」(業界関係者)。明快な解決策は簡単に見つかりそうもない。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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